このページの要点
- 遅延損害金は書かなければ法定利率。年14.6パーセントでも3か月で約3千円なので、取立ての主力にはならない。
- 期限の利益の喪失で一括請求できるのは確定した代金の残り。将来の月額分は、解除と残りの期間の精算で組み立てる。
- 業務の停止は、催告、止めるものと続けるもの、再開の条件を段階ごとに契約書へ書く。
- 連絡不能は、登録連絡先、手段、回数、日数で客観的に定め、通知が届いたと言える形にする。
最初に結論:未払いと連絡不能は「どの段階で何を止めるか」を一続きの手順として書いておく
SNS運用代行の報酬は月額で決まっていることが多く、作業は入金を待たずに毎月進みます。代金が一度払われなくなると、受託者には「続ければ未払いが膨らむ」「止めれば債務不履行と言われるかもしれない」という板挟みが生じます。連絡も取れなくなれば、催告も届かず、手順が回りません。
結論から言うと、遅延損害金、期限の利益の喪失、業務の停止、連絡不能の4つは、別々の条項に見えて一つの流れです。「何日目に、誰が、何をするか」で契約書に書いてあれば迷わずに動けます。書いていなければ民法の一般的なルールに頼ることになり、月額の継続契約には向きません。まず言葉をそろえます。
- 遅延損害金:支払期日を過ぎたことに対し、遅れた日数に応じて払う賠償の金額です。年率で定め、日割りで計算します。
- 期限の利益:支払期日が来るまでは払わなくてよい、という債務者の利益です。「失う」とは、期日の前でも残りを一括で払う立場になることを指します。
- 業務の停止:契約は続けたまま、受託者が作業を一時的に止めることです。契約を終わらせる「解除」とは別です。
- 連絡不能:顧客と連絡がつかず、確認・承認・支払の話が進まない状態です。いつからそう言えるのかを契約で決めます。
未払いが起きてからの標準的な流れ(日数は例)
- 1支払期日入金がなければ、遅延損害金が発生し始める。
- 2案内翌営業日に入金確認の連絡をする。作業は続ける。
- 3催告期限を区切った催告書を複数の手段で送る。
- 4一部停止期限が過ぎたら、新規の企画・撮影を止める。
- 5全部停止予約投稿を整理し、全部の業務を止める。
- 6解除・精算入金がなければ解除し、既履行分と実費を精算する。
遅延損害金は金額が小さく、取立ての主力にはなりません。期限の利益の喪失は、分割払いのように確定した代金の残りを一括請求するときに効きます。いちばん実効性があるのは業務の停止で、連絡不能の条項は、その通知が「届いた」と言えるようにする土台です。全体の組み立ては業務委託契約書の作り方、申込書と規約の型での一般条項は申込書・利用規約の作り方のページをご覧ください。
支払時期と遅延損害金:「いつ・いくら」を数字で書く
支払時期の型で、未払いに気づく頃の作業量が決まる
何も書かなければ、民法は月額を後払いと考えます。準委任の受任者は、特約がなければ報酬を請求できず(民法648条1項)、期間で定めた報酬は期間を経過した後に請求できます(同条2項ただし書、民法624条2項)。完成品を約束する部分を請負と見る場合は、引渡しと同時に払うのが原則です(民法633条)。実際の契約書は特約で変えており、型ごとに、未払いが発覚した時点の作業量は大きく違います。
支払時期の型と、未払いの重さ
| 型 | 支払の流れ | 未払いに気づく頃の作業量 | 条項で足すこと |
|---|---|---|---|
| 月初の前払い | 当月分を月初までに払う | 入金がなければ着手しないので、ほぼゼロ | 入金確認後に着手すること |
| 月末締め・翌月末払い | 4月分は5月末日が期日。5月の作業は期日前から進行 | 期日の翌日に判明した時点で、およそ2か月分 | 催告と停止の手順、停止中の報酬 |
| 成果報酬・売上の分配 | 成果や売上の確定後に払う | 確定までの運用の全部 | 確定日、報告の期限 |
| 初期費用の分割払い | 契約時の費用を数回に分ける | 分割の回数分の残額 | 期限の利益の喪失事由 |
前払いでも、次の月の入金がないまま作業を始めれば同じ問題が起きます。入金を確認する日と担当を決めておきます。
請求書と契約書の食い違いも未払いの原因です。契約書は「翌月末払い」なのに請求書は「受領後14日以内」と印字されていると、顧客は後者で動きます。期日は請求書の記載にかかわらず契約書によると決めておきます。
遅延損害金は、書かなければ法定利率になる
金銭の支払が遅れたときの賠償額は、遅れの責任を負った最初の時点の法定利率で決まり、約定の利率がそれより高ければ約定の利率によります(民法419条1項)。債権者は損害を証明する必要がなく(同条2項)、債務者は不可抗力を理由に争えません(同条3項)。法定利率は年3パーセントを出発点に3年ごとに見直されます(民法404条2項・3項)。率を書かない契約書では、請求できるのはこの低い率の範囲にとどまります。
運用代行の契約書では年14.6パーセントとする例が多く見られます。消費者契約法9条1項2号が、消費者が期日までに払わない場合の賠償額を予定する条項について、年14.6パーセントを超える部分を無効としていることに由来する率です。顧客が事業のためではなく契約する個人なら、この上限が直接かかります。事業者どうしでは同じ規定はありませんが、実務では同じ率が広く使われ、あまりに高い率は賠償額の予定(民法420条)として公序良俗(民法90条)の面から争われるおそれがあります。
遅延損害金の計算例(月額88,000円(税込)が遅れた場合。年14.6パーセント、1年を365日として日割り)
| 遅れた日数 | 計算 | 遅延損害金 |
|---|---|---|
| 30日 | 88,000円 × 0.146 × 30 ÷ 365 | 1,056円 |
| 60日 | 88,000円 × 0.146 × 60 ÷ 365 | 2,112円 |
| 90日 | 88,000円 × 0.146 × 90 ÷ 365 | 3,168円 |
1日あたり35.2円です。3か月遅れても約3千円で、金額で顧客を動かす力は大きくありません。
遅延損害金は「遅れには費用がかかる」と文書で約束しておく根拠の条項であって、回収の主役ではありません。起算日、計算の基礎、1年を365日とする日割りを書き、一部が入金されたときは残額に対して計算します。
報酬の支払と遅延損害金(事業者向けの契約の例)
1委託者は、毎月末日までに受託者が提供した業務の報酬(消費税を含む。)を、翌月末日までに、受託者が指定する口座に振り込んで支払う。支払期日が金融機関の休業日にあたるときは、翌営業日を支払期日とし、振込手数料は委託者の負担とする。
2受託者の請求書の記載にかかわらず、前項の支払期日は同項の定めによる。請求書の未着は、委託者が支払を免れる理由にならない。
3委託者が支払期日までに報酬を支払わないときは、支払期日の翌日から支払済みまで、未払額に対し、1年を365日とする日割計算により年14.6パーセントの割合による遅延損害金を支払う。
顧客が消費者に当たる場合は、年14.6パーセントを超える部分が無効になるため、この率を上限とします。
期限の利益の喪失:一括で請求できるのは何か
民法は、期限は債務者の利益のために定めたものと推定します(民法136条1項)。支払期日までは払わなくてよいのは、顧客の権利です。この利益を法律上当然に失うのは、破産手続開始の決定を受けたとき、担保を滅失・損傷・減少させたとき、担保を供する義務があるのに供しないときの3つだけです(民法137条)。支払の遅れや連絡不能は含まれませんから、契約書に書かなければ、期日の来ていない分を前倒しで請求することはできません。
ただし、運用代行で効く場面は限られます。月額を毎月払う契約では、請求したいのは期日が来た分で足りるからです。効くのは、初期費用や撮影費の分割払い、年間料金の分割払い、追加作業や立替実費の後払い、終了時の精算金を分割にする合意など、確定した代金に残りが生じる場面です。
将来の月額報酬を、一括請求できるのか
誤解されやすいのがここです。「1回でも払わなければ期限の利益を失い、残りの契約期間の報酬を一括で払う」と書いた契約書を見かけますが、将来の月額報酬は、まだ行っていない運用の対価です。前倒しになるのは払う時期だけで、作業を提供していない部分まで請求できるかは争いになりやすく、顧客は提供を受けていない期間の報酬を払う理由はないと主張するでしょう。準委任はいつでも解除でき、残りの期間の報酬を得られなくなること自体は原則として賠償の対象になりません(民法651条2項2号のかっこ書)。将来分は、解除と残期間の精算(違約金)を契約に明記して組み立てます。違約金の設計は業務委託契約書の作り方のページで扱っています。
未払いの種類と、期限の利益の喪失の効き方
| 未払いの種類 | 具体例 | 喪失で足りるか | 条項で足すこと |
|---|---|---|---|
| 期日が過ぎた月額報酬 | 4月分が5月末日を過ぎても未入金 | 不要(すでに弁済期) | 遅延損害金、催告、停止 |
| 分割払いの残額 | 初期費用の12回払いで、3回目から未払い | 足りる(確定した代金) | 喪失事由、通知、猶予の日数 |
| 年間契約の将来の月額 | 残り8か月分の報酬 | 足りないことが多い(未提供の作業の対価) | 解除と残期間の精算 |
| 立替金・外注費 | 撮影費を立て替えた | 精算期日を過ぎれば通常の遅れ | 事前承認の基準、精算期日 |
個人(消費者)向けに分割払いを設けるときは、割賦販売法などの規制の有無を先に確かめます。
当然に失うのか、通知で失うのか
喪失には、自動的に失う「当然喪失」と、受託者の通知で失う「請求喪失」があります。支払の停止、不渡り、破産や民事再生の申立て、差押えのように第三者が見ても分かる事由は当然喪失に向きます。支払の遅れ、契約違反、連絡不能のように程度や評価が入る事由は、通知の時点で失う形にすると、いつ失ったかが明確になります。
実務で見かける誤りは、「1回でも遅れたときは当然に」とだけ書く例です。振込が1日遅れただけで一括請求が可能になる書き方は、顧客から見て過酷で争われやすく、受託者にとっても使いにくい条項です。猶予の日数と通知を置き、顧客の申出と誠実な対応を見て分割払いの継続に応じられる、と書くほうが運用できます。連絡不能のような状態の評価で喪失させるときは、「一定の日数連続したとき」などの客観的な基準を添えます。
期限の利益の喪失(分割払いのある契約の例)
1委託者について、支払の停止、手形・小切手の不渡り、破産手続開始や民事再生手続開始の申立て、差押え、仮差押え又は仮処分の事由が生じたときは、受託者の通知又は催告を要せず、委託者は当然に期限の利益を失い、一切の金銭債務を直ちに支払う。
2委託者が、分割払いの支払を支払期日から14日を経過しても行わないとき、第○条の連絡不能の状態にあるとき、又は相当の期間を定めた催告に応じないときは、受託者の通知が到達した時に、委託者は期限の利益を失う。
3前2項により期限の利益を失ったときは、委託者は、支払期日が到来した報酬と分割払いの残額を直ちに支払う。支払期日が到来していない月額報酬は、第○条(中途解約及び精算)による。
日数は例です。分割払いの回数に合わせて決めます。
業務の停止:催告から解除までを段階に分けて書く
受託者にとって最も効く手段は停止ですが、民法の一般的なルールだけでは簡単ではありません。同時履行の抗弁(民法533条)は、相手が履行を提供するまで自分の債務を拒める仕組みですが、相手の債務が弁済期にないときは使えません(同条ただし書)。後払いの月額では当月の作業が報酬の期日より先に行われ、受託者が先に履行する形になります。前の月の未払いを理由に次の月の作業を止められるかは、継続契約を一体と見るかで解釈が分かれ、当然には認められません。停止の権利は契約書に書きます。
契約を終わらせる手段は、催告による解除(民法541条)です。相当の期間を定めて催告し、期間内に履行がなければ解除できますが、不履行が軽微なときは解除できません。顧客が履行を拒絶する意思を明確に表示したときは催告が要りません(民法542条1項2号)。無催告で解除できる事由は、契約書に具体的に書いておきます。
段階ごとに、止めるものと続けるものを分ける
顧客のアカウントには予約投稿が残り、広告が配信中かもしれません。「停止できる」とだけ書くのではなく、段階ごとに範囲を決めます。
停止の段階と範囲の例(日数は例)
| 段階 | きっかけ | 止めるもの | 続けるもの |
|---|---|---|---|
| 一部停止 | 催告書の到達から7日が経過 | 新規の企画、撮影、レポート | 予約済みの定期投稿、緊急時の対応 |
| 全部停止 | 一部停止から14日が経過 | 全部の業務。予約済みの投稿の取下げ | 緊急時の非公開化 |
| 解除 | 全部停止から30日が経過、又は連絡不能が続く | 契約そのもの | 精算と後始末 |
再開の条件は「未払額と遅延損害金の入金確認から3営業日以内」のように書きます。「続けるもの」を決めないと、停止後に古い情報の投稿が出続けます。
停止の前に催告を入れるのは、請求書の未着などの顧客の言い分に対応する機会を設け、あとで停止の正当性が争われたときに、支払の機会を与えたと示せるようにするためです。
停止中の報酬と、停止の免責
停止期間は作業をしていないので、全額を請求する根拠は弱くなります。実務では日割りで減額する、または請求しないと定めて、再開後に回復する書き方が見られます。素材の提供や確認がなくて作業ができない場合は、顧客の責めに帰すべき事由で履行できなくなった場合にあたり、顧客は報酬の支払を拒めません(民法536条2項)。理由が未払いか協力義務の不履行かで条項を分けます。
停止による顧客の損害について、事業者どうしの契約では、受託者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失による場合を除いて責任を負わない、という書き方が使えます。顧客が消費者のときは、責任の全部を免除する書き方は軽い過失も含めて消費者契約法8条1項1号・3号により無効です。上限を設けるなら、「当社、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失による場合を除き」を、上限を定める一文の中に書きます(同条3項)。
業務の停止(事業者向けの契約の例)
1委託者が報酬を支払期日までに支払わないときは、受託者は、10日以上の相当の期間を定めて、書面又は電磁的方法で支払を催告することができる。期間内に支払がないときは、受託者は、通知により本業務の全部又は一部を停止することができ、停止する範囲は通知に記載する。
2受託者は、停止中、受託者が設定した予約済みの投稿その他の配信を、委託者から付与された権限の範囲で取り下げ、又は停止することができる。緊急の対応が必要なときの一時的な非公開化は、停止中も行うことができる。
3受託者は、停止により委託者に生じた損害について、受託者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失による場合を除き、責任を負わない。
4停止は、委託者が未払の報酬及び遅延損害金の全額を支払い、受託者が入金を確認した時に解除され、受託者は3営業日以内に業務を再開する。停止の期間に対応する月額報酬は、日割りで減額する。ただし、委託者の素材提供又は確認の遅れが停止の原因である場合は、この限りでない。
停止中の報酬を減額するか、請求し続けるかは、取引の実態に合わせて選びます。
停止しても入金がなければ解除し、準委任が中途で終了したときは、すでにした履行の割合に応じて報酬を請求します(民法648条3項2号)。権利を代金の全額の支払時に移す型の契約なら、解除時点で未払いの部分は権利が移っておらず、利用許諾も止められます(著作権と素材の取扱いのページで扱っています)。あわせて、受託者が返すべき前払金などと未払報酬を差し引ける相殺(民法505条1項)の条項を置き、顧客が不満を理由に報酬から一方的に差し引くことを防ぐため、顧客からの相殺は禁止すると書きます。
顧客が連絡不能になったとき:何をもって連絡不能とするか
連絡不能の条項は、運用代行の契約書や規約に数多く見られますが、書き方の幅は大きく、「音信不通と判断した場合」と書くもの、「正当な理由なく7日以上」「5営業日以上」「30日以上応答がない」「1か月に及んだとき」と書くものがあります。問題は期間の長短よりも起点です。何に対する無応答か、どの手段で何回連絡したかが書かれていないと、条項が働くかを後から証明できません。「判断した場合」という主観的な書き方は特に弱く、客観的な基準が最初の条件です。
連絡不能の場面ごとの書き分け
| 場面 | よくある書き方 | 問題点 | 直し方 |
|---|---|---|---|
| 確認・承認に返事がない | 確認が遅れた場合、受託者は責任を負わない | 止まった間の月額がどうなるか不明 | 確認期限、期限後は保留で月額は発生すること、一定日数後は当月の作業を延期できること |
| 支払の催告に返事がない | 連絡不能の場合は直ちに解除できる | いつから連絡不能か、催告したかが争われる | 催告の手段・回数・期間を要件にして、停止・解除につなげる |
| 長期の所在不明 | 音信不通と判断した場合は終了できる | 判断の基準と後始末の定めがない | 日数と手段、終了の通知方法、権限の削除とデータの保管期間 |
確認への無応答の扱いは投稿の承認とコメント・炎上対応のページとあわせて決めます。
通知が「届いた」と言えるようにする
停止や解除の通知は、相手に届いた時から効力が生じます(民法97条1項)。民法には、相手方が正当な理由なく到達を妨げたときは通常到達すべきであった時に到達したとみなす規定がありますが(同条2項)、これは意図的に受け取りを妨げた場合の話で、単に応答しない顧客にそのまま使えるとは限りません。そこで、次の3点を契約で決めます。
- 連絡先を登録させる:メール、チャット、電話、郵送先を複数登録させ、変更は一定日数内に通知させます。会社の共有メールアドレスなら、担当者の退職で途絶えません。
- 到達の時点を決める:登録連絡先に発信した時に到達したとみなす、と書きます。事業者どうしでは合意として扱われやすい定めですが、全く届いていない通知にどこまで効力を認めるかは事情によります。
- 複数の手段で、複数回送る:催告・停止・解除の通知は、チャットとメールの両方で送り、最後に郵送の書面を加えて、日時と手段を記録します。
顧客が消費者のときは、「発信すれば到達」と一方的に定める書き方は、消費者契約法10条により争われるおそれがあります。複数手段での連絡と日数の経過を要件にするほうが安全です。
連絡不能の間の緊急対応と、終了後の後始末
連絡不能の最中も、炎上、権利侵害の通報、乗っ取りの疑いは起こり得ます。顧客の判断を待つと被害が広がるため、投稿の一時的な非公開化と予約投稿の停止ができ、実施後は直ちに登録連絡先へ報告すると決めます。権限は最小限にし、削除や返信など内容の判断は顧客に残します。炎上時の分担は投稿承認・炎上時の対応、権限の扱いはアカウント管理のページで扱っています。
連絡不能が続いたときの終了の条項には、受託者の通知で効力が生じること、終了日までの報酬・実費・遅延損害金は顧客が払うこと、受託者は付与された権限を外し保存したログイン情報を削除すること、預かった素材や個人情報を含むデータは一定期間保管して消去し、返却先のないまま保管し続けないことを入れます。連絡不能の背景に、個人事業主の顧客の死亡や破産があることもあります。準委任には委任の規定が準用され(民法656条)、委任者の死亡と破産手続開始の決定は終了事由です(民法653条1号・2号)。契約で別に定められるので、その場合の手順も書いておきます。
登録連絡先と連絡不能(事業者向けの契約の例)
1委託者は、申込書に記載したメールアドレス、チャットの連絡先及び電話番号(以下「登録連絡先」という。)を受託者との連絡に用い、変更があるときは変更後7日以内に通知する。受託者が登録連絡先に宛てて発した通知は、通常到達すべきであった時に到達したものとみなす。ただし、停止及び解除の通知は、登録連絡先のうち2つ以上の手段により発する。
2受託者が、登録連絡先のうち2つ以上の手段により、確認、承認又は支払に関する連絡を10日の間に2回以上行ったにもかかわらず、委託者から10日以上応答がないときは、委託者は連絡不能の状態にあるものとする。
3連絡不能の間、受託者は、新規の企画、撮影及びレポートの作成を保留し、予約済みの投稿を停止することができ、緊急の対応が必要なときは投稿を一時的に非公開にして、直ちに登録連絡先に報告する。連絡不能が30日継続したときは、受託者は、通知により本契約を解除することができ、委託者は、解除の日までの報酬、実費及び遅延損害金を支払う。
日数は例です。投稿の頻度に合わせて決めます。
所在が分からない顧客に請求する場合は、手続に制約があります。少額訴訟は60万円以下の金銭の支払を求める訴えが対象です(民事訴訟法368条1項)。支払督促は、日本国内で公示送達によらずに送達できる場合に限られるため(同法382条ただし書)、所在が分からない相手には使えません。住所や居所が分からない場合は公示送達という方法があり(同法110条1項1号)、解除などの意思表示そのものも、裁判所の掲示と官報の掲載による公示で行えます(民法98条)。公示による意思表示は、官報に掲載した日から2週間で到達したものとみなされます(同条3項)。手間と費用が請求額に見合うかを考えて選ぶことになります。債権は、権利を行使できると知った時から5年、行使できる時から10年で時効により消滅します(民法166条1項)。
代理店・外注先がいるとき、そして催告書を出すとき
代理店を通す契約では、顧客の入金と自社への支払を切り離すか決める
代理店が顧客から運用を受け、運用代行者に再販する形では、お金は「顧客から代理店へ」「代理店から運用代行者へ」と二段階で動きます。代理店が顧客からの入金の有無にかかわらず運用代行者に払う型なら、顧客の未払いは代理店が負担します。入金後に払う型なら、顧客の未払いが運用代行者に及ぶため、入金の確認方法、入金から支払までの日数、顧客の未払いが続くときの停止の権利を決めます。顧客への直接連絡を禁じる条項があると連絡不能の手順が回らないので、一定日数連絡が取れないときと緊急のときは直接連絡できる例外を置きます。
外注先への支払は、顧客の未払いを理由に遅らせられない
撮影や編集を個人のクリエイターに再委託している場合、外注先がフリーランス法の特定受託事業者に当たり、発注側が特定業務委託事業者に当たるときは、報酬の支払期日を、給付を受領した日から60日以内のできる限り短い期間内に定めなければなりません(フリーランス法4条1項)。元の委託者から受けた業務の再委託では、元委託支払期日から30日以内とする特例があります(同条3項)。定めた期日までに払う義務があり(同条5項)、1か月以上の業務委託では、外注先に責めに帰すべき事由がないのに報酬を減額することも禁じられます(同法5条1項2号)。顧客の入金後に払うという約束を外注先との間に置いても、顧客の未払いのリスクを外注先に回すことはできません。顧客との契約を前払い型にし、入金を確認してから外注先に発注する設計にします。起算日などは成果報酬とフリーランス法のページで説明しています。
催告書は、あとで読み返せる形で出す
催告書に書くことと、記録に残すこと
- 契約の名称、請求書の番号と日付、未払いの金額とその内訳(対象の月、すでに入金のあった額)を書く
- 支払の期限を日付で書き(相当の期間を置く)、振込先と手数料の負担を書く
- 期限までに支払がないときは、業務の停止や契約の解除を行うことがあると書く
- 遅延損害金の起算日と率を書く
- チャット・メール・郵送の複数の手段で送り、送信の記録と郵便の控えを残す
催告書の差出人は受託者本人です。事実と数字だけで書き、感情的な表現は避けます。
よくある失敗と直し方、ヒヤリングで確認すること
よくある失敗と直し方
未払い・連絡不能の条項の書き直し
遅延損害金
ねらい率、起算日、計算の基礎がないと、請求の根拠が曖昧になります。
追加の違約金
ねらい消費者には年14.6パーセントを超える部分が無効で(消費者契約法9条1項2号)、事業者どうしでも過大なら争われます(民法420条・90条)。
期限の利益
ねらい1日の遅れで一括請求は過酷で、将来分は未提供の作業の対価のため争いになります。
連絡不能
ねらい「判断した」では、基準と記録を示せません。手段、回数、日数を客観的に書きます。
ヒヤリングで確認すること
未払い・連絡不能の条項を作る前に事務所が伺うこと
- 報酬は前払いですか、後払いですか。請求書はいつ出し、いつ入金されますか。未払いが分かった時点で終わっている作業の量が決まります。前払いなら着手の条件を、後払いなら停止の手順を厚くします。
- 初期費用や年間料金の分割払い、精算金の後払いはありますか。期限の利益の喪失が必要かが決まります。確定した代金の残りが生じる契約で効く条項です。
- 顧客は法人ですか、個人事業主ですか。事業と関係なく契約する個人はいますか。消費者契約に当たると、遅延損害金の上限、免責の書き方、到達のみなしに制限がかかるためです。
- 連絡手段は何ですか。窓口の担当者は誰で、交代はありますか。登録連絡先の設計と、担当者の交代時の通知義務を決めるためです。
- アカウントには権限付与で入りますか。予約投稿や広告を受託者が設定していますか。停止のときに、受託者が止められるものと取り下げられるものが、権限の範囲で決まるためです。
- 撮影・編集を外注していますか。外注先は個人ですか。顧客の未払いが続く間も外注先への支払期日は来ます。フリーランス法の枠に収まる設計にするためです。
日数や金額は、顧客の事業の規模や契約の期間に合わせて決めます。
起きがちなこと:気づいたときには2か月分たまっている
よくあるご質問
遅延損害金の率を契約書に書いていない場合、請求できませんか?
請求はできます。金銭の支払が遅れたときの損害賠償は、書いていなくても、遅れた時点の法定利率で計算されます(民法419条1項)。法定利率は年3パーセントを出発点に3年ごとに見直されるため、年14.6パーセントなどの約定の率より低くなります。率を高くしたいときは、契約書に書いておく必要があります。
月額報酬が1回払われなかっただけで、運用を止めてもよいですか?
契約に停止の権利と手順を書いてあれば、その定めに従って止められます。書いていない場合は、相手の債務が弁済期にないときは同時履行の抗弁が使えないことなどから、当然に止められるとは限りません。期限を区切った催告をしてから停止する手順を、契約書に書いておくのが安全です。
期限の利益を失わせれば、残りの契約期間の月額報酬を全部請求できますか?
当然にはできません。将来の月額報酬は、まだ提供していない運用の対価であり、支払時期が前倒しになっても、作業を提供していない部分を請求できるかは争いになりやすい論点です。確定した代金の残りは期限の利益の喪失で請求し、将来分は解除と残りの期間の精算の定めで扱うほうが整理がつきます。
顧客と連絡が取れないとき、受託者が一方的に契約を終了できますか?
契約書に連絡不能の定義と終了の手順があれば、その定めに従います。定めがないときは、催告による解除(民法541条)などの一般的なルールによることになり、催告が届いたかどうかが問題になります。登録連絡先、複数の手段での連絡、日数の基準を契約に書き、送った記録を残しておくことが大切です。
顧客が個人の場合も、遅延損害金は年14.6パーセントでよいですか?
顧客が事業のためではなく契約する個人(消費者)のときは、年14.6パーセントを超える部分が無効になります(消費者契約法9条1項2号)。年14.6パーセントまでは有効です。個人事業主が事業のために契約する場合は消費者契約に当たらず、この上限は直接かかりませんが、同じ率を使うのが実務の目安です。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引に必要な対応は、当事者の規模、顧客が事業者か個人か、契約内容、報酬の決め方などによって異なります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は官公庁の公表資料で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会) / ステルスマーケティングに関する消費者庁の案内 / 景品規制の概要(消費者庁)