外注した投稿物の著作権は、原則として制作者にある
会社の従業員が仕事として作ったものは、一定の条件のもとで会社が著作者になります(職務著作、著作権法15条)。しかし、運用代行業者やフリーランスのデザイナーは依頼者の従業員ではないため、この仕組みは基本的に当てはまりません。依頼者が投稿物を自由に使い続けたいなら、契約で手当てしておく必要があります。
「譲渡」と「利用許諾」のどちらにするか
契約での手当て方は、大きく2つあります。
| 方式 | 内容 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 著作権の譲渡 | 著作権そのものを依頼者に移す。依頼者は他の媒体への転用や改変も原則として自由にできる | ブランドの基幹となる画像・ロゴ・動画など、長く使い続けるもの |
| 利用許諾(ライセンス) | 著作権は制作者に残し、媒体・期間・地域・改変の可否などの範囲を決めて使うことを認める | テンプレートや制作者独自の表現を含むもの、報酬を抑えたいとき |
どちらを選ぶかは報酬額にも関わります。譲渡を前提にするなら、その対価が報酬に含まれていることを契約書に明記しておくと、後から追加請求をめぐる争いになりにくくなります。
譲渡するなら「27条・28条の権利」を書き込む
著作権を譲渡する契約でも、翻訳・翻案(作品を元に別の作品を作ること)の権利と、そうして作られた二次的著作物の利用に関する権利は、契約で特に明記しないと、譲渡した側に残ると推定されます(著作権法61条2項)。投稿画像を元に広告バナーを作る、動画を切り出して別の動画にするといった使い方を想定するなら、「著作権法第27条及び第28条に規定する権利を含む」と書き込んでおくことが重要です。
著作者人格権は譲渡できない
著作者には、著作権とは別に、作品を公表するかどうか、名前を表示するかどうか、作品を勝手に改変されない権利などの著作者人格権があります。この権利は譲渡することができません(著作権法59条)。そこで実務では、制作者が依頼者や依頼者の指定する者に対して著作者人格権を行使しないことを約束する条項(不行使特約)を置くのが一般的です。
制作者の「実績公開」を認めるか
運用代行業者にとって、手がけたアカウントや投稿は営業上の実績です。一方で依頼者の中には、外部に運用を任せていることを公表したくない事業者もいます。ポートフォリオやSNSでの実績紹介を認めるか、認めるならどの範囲か(社名を出すか、数値を出すか)を契約で決めておきます。
素材の権利は、投稿物とは別に確認する
投稿物の著作権を整理しても、その中で使った素材の権利が別に存在することがあります。
- 写真・イラストの素材サイト: 商用利用の可否、クレジット表記の要否、加工の可否、SNS広告での利用の可否は、素材サイトごとの利用規約で決まります。
- フォント: 画像に文字として使う場合と、ロゴとして使う場合で、ライセンスの条件が異なることがあります。
- 音源・BGM: 各プラットフォームが提供する音源ライブラリには、ビジネスアカウントで使える範囲が限られているものがあります。
- 人物の写り込み: スタッフや来店客が写っている写真を使う場合は、本人の同意を得ておくことが大切です。肖像に関する権利は法律に明文の規定はありませんが、裁判例で認められています。
契約書では、素材の選定と権利確認をどちらが行うか、素材の権利侵害で第三者から請求を受けた場合にどちらが責任を負うかを決めておきます。
契約終了後の扱いを決めておく
| 対象 | 決めておくこと |
|---|---|
| 公開済みの投稿 | そのまま掲載を続けてよいか、削除が必要か |
| 未公開の制作物 | 納品済みとして引き渡すか、報酬の精算対象にするか |
| 元データ | 編集可能な形式(PSD・プロジェクトファイル等)まで引き渡すか |
| テンプレート | 終了後も依頼者が使い続けてよいか |
| ノウハウ・運用手順書 | 秘密情報として扱うか、依頼者が社内で使ってよいか |
よくあるご質問
契約書に著作権の記載がない場合、依頼者は投稿物を使えないのですか?
契約の目的から、少なくとも予定していた範囲での利用は認められると考えられることが多いです。ただし、他の媒体への転用や改変、契約終了後の利用まで認められるかは争いになり得るため、契約で明記しておくことが大切です。
著作権を譲渡すれば、制作者は実績として紹介できなくなりますか?
著作権の譲渡と実績公開は別の問題です。譲渡した場合でも、契約で実績公開を認めることはできます。逆に、譲渡しない場合でも、依頼者の希望で実績公開を禁止することもできます。
フリー素材なら、SNS広告にも自由に使えますか?
「フリー」は無料という意味であって、使い方が自由という意味とは限りません。商用利用、広告利用、加工、クレジット表記の条件は、素材サイトごとの利用規約で確認します。
著作者人格権の不行使特約は、制作者に不利すぎませんか?
依頼者が投稿物を加工・転用しやすくするための一般的な条項です。制作者側としては、行使しない相手方の範囲や、名前の表示に関する扱いを個別に調整することもできます。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引に必要な対応は、委託先の規模、契約内容、報酬の決め方などによって異なります。参考: 公正取引委員会 フリーランス法 / 消費者庁 ステルスマーケティング規制 / 文化庁 著作権
