SNS運用の外注クリエイター・個人スタッフへの発注:フリーランス法の明示事項と労働者性の線引き

個人の動画編集者やデザイナー、投稿担当に仕事を頼むとき、発注の内容を直ちに文字で伝える義務と、頼み方が「働かせている」状態にならないための線引きを整理します。

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このページの要点

  • 個人や一人会社に頼むと相手は特定受託事業者。発注のたびに、給付の内容・報酬の額・支払期日など8つの事項を直ちに明示する。
  • 支払期日は、受け取った日から60日以内。検収や請求書の遅れは、期日を後ろにずらす理由にならない。
  • 業務委託か労働者かは、名称ではなく、依頼の諾否・進め方の指示・時間の拘束・報酬の決め方などの実態で決まる。
  • 継続して頼むなら、募集の表示、育児・介護への配慮、ハラスメント対策、解除の30日前予告まで整える。

最初に結論:発注の中身を「直ちに」文字で伝え、頼み方が「働かせている」状態にならないようにする

SNSの運用では、動画編集者、デザイナー、ライター、撮影者、投稿やコメント対応を手伝うスタッフなど、個人に仕事を頼む場面が日常的にあります。こうした個人への発注で押さえる点は、大きく2つです。1つは、発注の内容を、発注したらすぐに書面かメールなどで相手に伝えるという、フリーランス法(略称。特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律のこと)が定める義務です。もう1つは、頼み方や払い方が、実質的に「雇って働かせている」ことになっていないか、つまり業務委託と労働者の線引きです。

この2つは、SNS運用の現場では同じ場面で同時に起きます。チャットで「今日中にこの動画お願いできますか」と頼み、金額も納期も後回しのまま作業が始まり、その後も投稿時刻や返信の速さを細かく指示する。この流れは、明示の義務の面でも、指揮命令に近い関係の面でも問題を抱えています。

  • フリーランス法の明示(3条)は、相手が従業員を使わない個人や一人会社であれば、発注する側が一人で運営していても必要です。支払期日や禁止行為などの4条以降は、発注する側が従業員を使っているか、役員が2名以上いる場合に課されます。
  • 明示するのは、給付の内容、報酬の額、支払期日など8つの事項です。SNS運用では、本数・尺・修正回数・承認の手順・権利の扱いまで「給付の内容」に書き込んでおくと、後の争いを防げます。
  • 業務委託か労働者かは、契約書の題名や「雇用ではない」という一文では決まりません。依頼を断れるか、進め方を細かく指示されるか、時間に縛られるか、報酬が時間に比例するか、といった実態で判断されます。
  • 顧客から受けた運用を外注に出すときは、顧客向けの契約と外注先向けの契約をそろえます。

なお、成果報酬や支払期日60日の起算はSNS運用代行の成果報酬とフリーランス法、権利の連鎖はSNS運用代行の著作権のページが詳しいので、ここでは外注先に頼む側の視点に絞ります。

外注先はフリーランス法の対象になるのか:誰が「発注する側」で誰が「受ける側」か

結論から言うと、個人に、または役員が1人だけで従業員のいない一人会社に仕事を頼むと、その相手方は同法の「特定受託事業者」に当たります(同法2条1項)。「従業員を使用しない個人」と、「代表者以外に役員がなく従業員も使用しない法人」の2通りです。反対に、従業員を使っている会社や、役員が複数いる会社に頼む場合は、フリーランス法ではなく、資本金などの条件によって、中小受託取引適正化法(取適法。2026年1月1日から下請法がこの名称になりました)の対象になることがあります。

仕事を頼む側にも区別があります。特定受託事業者に業務委託をする事業者を「業務委託事業者」といい、このうち、従業員を使う個人や、役員が2名以上いる、又は従業員を使う法人を「特定業務委託事業者」といいます(同法2条5項・6項)。発注時の明示(3条)は業務委託事業者の全員に、報酬の支払期日(4条)や禁止行為(5条)、募集情報の表示(12条)、ハラスメント対策(14条)、契約の解除の予告(16条)などは特定業務委託事業者に課されます。

SNS運用の現場で頼むことの多い役柄と、法律上の位置付け

外注先の役柄委託の性質の見方注意したい点
動画編集者・デザイナー・ライター動画、画像、文章などを作ってもらう「情報成果物の作成」の委託(同法2条3項1号、4項)納品物の仕様、修正回数、権利の扱いを給付の内容として書く。権利は譲渡か許諾かで報酬の意味が変わる
投稿担当・コメント対応・分析レポートの作成運用という「役務の提供」の委託(同法2条3項2号)が中心。レポートは成果物の面も持つ役務提供の委託では、受領拒否と返品の禁止(5条1項1号・3号)は適用されない。それ以外の禁止行為は同じ
撮影者・カメラマン撮影という役務と、写真や動画という成果物の両面を持つ発注内容のどちらに重点があるかで見方が変わる。両面を書面に書き分けておく
出演者・モデル出演という役務の委託と見られることが多い肖像や音声の利用範囲は、報酬とは別に決めておく

成果物と役務が混ざる発注では、部分ごとに納期・報酬・支払期日を書き分けます。

顧客から受けた運用を外注に出す「再委託」のとき

運用代行会社が顧客から受けた業務の一部を、個人の編集者やスタッフに出すとき、運用代行会社は外注先から見て発注者になります。このとき、再委託である旨、元の委託者(顧客)の名称、元の委託業務の対価の支払期日などを明示した場合に限り、外注先への報酬の支払期日を、元の委託の支払期日から30日以内で定めることができます(同法4条3項)。たとえば、顧客からの支払期日が7月31日なら、外注先には8月30日までの、なるべく早い日に払う計算です。

気をつけたいのは、「顧客から入金があり次第、外注先に支払う」という書き方です。特例の基準は元の委託の支払期日という日付であり、入金の有無ではありません。代理店向けの契約では、受け手が「エンドクライアントからの入金の有無にかかわらず」支払う義務を負う設計が見られますが、同じ発想が外注先との契約にも必要です。

発注するときに「直ちに」明示すること:8つの事項をSNS運用ではどう書くか

仕事を頼んだら、すぐに、給付の内容や報酬の額、支払期日などを、書面か電磁的方法(メールなど。使える方法は公正取引委員会規則が定めます)で相手に示す義務があります(同法3条1項)。示す事項は、公正取引委員会の案内では8つに整理されています。契約書を一本作れば足りるのではなく、発注のたびに、内容が相手に届いている状態にします。

明示する8つの事項と、SNS運用での書き方

明示する事項SNS運用での書き方の例書き漏れると起きること
発注者と受注者の名称商号・氏名を書く。SNS上のハンドルネームだけにしない請求や支払の相手方が特定できない
業務委託をした日合意した日。口頭でも成立するが、記録が残る形にする「着手したら成立」では、いつ発注したのかが曖昧になる
給付の内容動画の本数・尺・縦横比・字幕の有無、納品形式、修正の回数、使う素材の出所、承認の手順、権利の扱い追加の修正や素材の差し替えで、やり直しの範囲が争いになる
受け取る日(期間)納品日。月次の運用なら「毎月1日から末日まで」のように期間で書く納期遅れの判断ができない
受け取る場所オンラインなら納品先のストレージやチャットの場所。撮影なら撮影場所納品したかどうかの証拠が残らない
検査を完了する日検査をするなら、検査が終わる日。「確認後」だけにしない検査が長引いて支払が遅れる原因になる
報酬の額と支払期日金額(総額か単価と数量)。経費の扱い。支払期日は具体的な日付にする「納品後すぐ」「確認でき次第」では期日を定めたことにならない
支払の方法現金以外(ポイントなど)で払うときだけ、その方法を書く想定していない形での支払を求められる

「まで」「以内」とだけ書くと、いつが支払期日かを特定できないおそれがあるため、支払期日は具体的な日付で書いておきます。

内容を定められない正当な理由がある事項は、その時点では明示しなくてもよく、決まったあとに直ちに明示します(同法3条1項ただし書)。最初の発注書に「未確定の事項」と「いつ確定させるか」を書いておき、決まった時点で追加の書面を送る流れです。「何も決めずに始めて、あとで整理する」ことは認められていません。

電磁的方法で示した場合でも、相手が書面を求めたら、時間をおかず書面を渡す必要があります(同法3条2項。規則で定める例外あり)。メールやチャットで済ませる運用でも、書面にできる形で内容を保存しておきます。

SNS運用でありがちな「DMで頼んで、あとから決める」発注

SNS運用の外注で多いのは、DMやチャットで「この動画をお願いしたいです。〇日までに」と短く頼み、金額や修正回数は納品間際にやり取りする形です。この場合、頼んだ時点で業務委託が成立しているのに、示すべき事項が揃っていません。対策は、発注の定型フォームを一つ用意し、依頼のたびに8つの事項を埋めて送ることです。承認や修正の流れは投稿承認・コメント・DM対応・炎上時の対応で整理している内容と、発注書の記載をそろえます。

支払期日の計算例:検収の遅れと請求書の遅れは言い訳にならない

特定業務委託事業者は、検査の有無を問わず、成果物を受け取った日(運用のような役務は、提供を受けた日)から数えて60日以内の、なるべく早い日を支払期日に決める必要があります(同法4条1項)。起点は受け取った日なので、検収や請求書が遅れても、期日を後ろにずらす書き方は通りません。期日を決めなかったときは受け取った日が、60日を超えて決めたときは60日を経過する日が、期日とみなされます(同条2項)。

支払期日の定め方と、60日の枠に収まるかの見方(動画を6月10日に受け取った場合)

定め方支払日受け取りからの日数見方
月末締め・翌月末日払い7月31日51日60日以内。月単位の締切制度は、公正取引委員会のQ&Aで、受け取りから2か月以内とされている
検収完了(7月20日)から30日後払い8月19日70日超過。検査の有無は起算に影響しないので、期日は8月9日とみなされる
請求書を受け取った日(7月25日)から30日後払い8月24日75日超過。請求書の遅れは起算日を動かさない
月末締め・翌々月末日払い8月31日82日超過。2か月以内の枠も超える

日数は、受け取った日の翌日から数えた概算です。

外注先に出す発注書の記載(動画制作の個別発注の例)

1委託者(以下「甲」)は、受託者(以下「乙」)に対し、下記の動画制作を委託し、乙はこれを受託する。業務委託をした日は、本書を乙に送信した日とする。

2給付の内容は、ショート動画1本(尺30秒以内、縦型、字幕付き)の編集とし、甲が提供する素材データを用いる。修正は2回までとし、3回目以降は別途、乙の見積りによる。

3乙は、令和〇年〇月〇日までに、甲が指定するオンラインストレージの所定のフォルダへ、完成した動画ファイルを納品する。

4甲は、納品を受けた日の翌日から3営業日以内に検査を行い、検査を完了する日を令和〇年〇月〇日とする。この検査は、報酬の支払期日に影響しない。

5報酬は金〇円(税込。素材の購入費、交通費等の実費は含まず、事前に甲が書面又は電子メールで承諾した実費に限り別途実費精算する。)とし、納品を受けた日の属する月の末日までに締め、その翌月末日までに、乙が指定する口座へ振り込んで支払う。支払は金銭による。

6乙が制作した動画に関する著作権は、著作権法27条及び28条の権利を含め、報酬の全額を受け取った時に甲へ移る。移転の対価は前項の報酬に含まれる。乙は、甲及び甲が指定する第三者に対し、著作者人格権を行使しない。

最後の項は、外注先に権利の譲渡を求めるときに、その対価が報酬に含まれることを給付の内容として示す書き方です。

業務委託と労働者の線引き:名称ではなく、働き方の実態で決まる

業務委託契約を結んでいても、実態が雇用に近ければ、労働者として扱われます。労働基準法9条は、事業に使われ賃金を受ける人を労働者とし、労働契約法2条1項も、使用者に使用されて働き賃金を受ける人を労働者としています。契約の題名や「雇用ではない」という確認の一文によって、この判断が決まるわけではありません。

厚生労働省の資料は、労働基準法上の労働者に当たるかを、「使用従属性」(他人の指揮監督のもとで労務を提供し、その報酬が指揮監督のもとでの労働の対価と見られること)を中心に、個別の事案ごとに総合して判断するとしています。具体的には、仕事の依頼や業務の指示を断れるか(諾否の自由)、業務の進め方への指揮監督があるか、場所や時間の拘束があるか、本人に代わる人が仕事をすることができるか(代替性)、報酬が労務の対価と見られるか、を確かめます。判断が難しいときは、機械や器具を誰が負担しているか、報酬の額が事業者としての性格を示すか(事業者性)、特定の相手に専ら従事しているか(専属性)といった補強の事情も見ます。この枠組みは、昭和60年の労働基準法研究会報告に基づく判断基準として整理されているものです。

SNS運用の外注で、労働者に近く見える運用と、独立した事業者として自然な運用

確かめる点労働者に近く見える運用独立した事業者として自然な運用
依頼を断れるか依頼を断ると次の仕事が来ない前提で、実質的に断れない案件ごとに受けるかを選べ、断っても不利益な扱いをしない
進め方の指示投稿文の言い回しや編集の手順まで細かく指定し、逐一指示する成果物の仕様(本数・尺・用途・守るべき規約)を示し、進め方は任せる
時間・場所の拘束毎日決まった時間にチャットに常駐し、日報や稼働時間の報告を求める納期と、必要な連絡の期限だけを決め、稼働の時間帯は任せる
代わりの人本人以外は一切不可補助者や代わりの人の利用を、承諾を条件に認める
報酬の決め方稼働時間に比例し、最低額が保証されている成果物や業務の単位で決まる対価
道具・名義会社の端末、会社名の肩書、会社のアカウントを常に使わせる自分の機材・ソフトで作業し、権限は業務に必要な範囲にとどめる
他の仕事他社の仕事を受けることを一律に禁じる禁じるのは秘密情報を使った競合に限る

どれか一つで決まるのではなく、総合して判断されます。左側の事情が複数重なると、契約書の文言を整えても、労働者と見られるおそれが高まります。

時間をもとに払い、出退勤を記録させる契約は、自分で証拠を作ることになる

個人に業務を委託する契約書のうち、稼働時間が一定の水準以上であることを報酬の条件とし、出退勤の時刻の記録を義務付け、最低額を保証し、契約の終了後にも一定の期間・地域で競合を禁じる、という組み合わせのものがあります。こうした条項は、単独でも労働者性の判断材料になり、重なると互いに補強して、準常勤の時間拘束型という見方につながります。業務委託で必要なのは成果物の完了確認であり、出退勤の記録は労働時間の管理と同じ意味を持ってしまいます。

直し方は、報酬を成果や業務の単位に結び付け、最低額の保証をやめることです。「支援金」などと名目を変えて最低額を残しても、一定の時間や収入に結び付いて支給されるなら、実質は同じと見られるおそれが残ります。

運用の現場で迷う場面を、問いの形で整理する

毎日の投稿を頼むと、指揮命令になりますか。投稿の頻度は、成果物の仕様として決めることができます。問題になるのは、予約投稿で足りるのに、決まった時刻に本人が手動で投稿することを求めるなど、時間への拘束が生じる運用です。「週5本、承認後に予約投稿」のように、本数と期限で決めれば、時刻の拘束を避けられます。

修正を何度も指示するのは、指揮監督ですか。仕様と違うので直してほしいという修正の依頼は、成果物に対する検収であり、注文者の当然の権利です。指揮監督と見られやすいのは、成果物ではなく作業の手順・時間・場所を指示する場合です。その意味で、修正の範囲と回数、期限を発注書に書いておくことが、双方にとって安全です。

チャットツールへの常駐や即時の返信を求めてよいですか。連絡手段の指定は問題ありません。ただ、「常にオンライン」や就業時間のような応答時間帯を求めると拘束性が強まります。返信は「営業日の翌日までに」のような期限の目安にとどめます。

運用マニュアルを守らせるのは問題ですか。法令、プラットフォームの規約、PR表記などは、事業者として守らせる必要があり、これは仕事の性質上の制約です。作業の順序や文章表現の細目まで定めると、指揮監督と見られる材料になります。表記の確認はSNS運用代行とステマ規制で説明しています。

顧客のアカウントのログイン権限を渡してもよいですか。業務に必要な範囲の権限を渡すこと自体は避けられません。ただ、共有のIDとパスワードを使わせると、誰が操作したか分からなくなります。権限は必要最小限にし、操作の記録が残る方法を選びます(アカウントの管理と凍結で扱っています)。

実態として、時間や場所の拘束、細かな指示がどうしても必要な業務であれば、契約書の文言で補うのではなく、働き方そのものを雇用として設計し直す対象です。

よくある失敗と直し方:外注先向けの契約でつまずきやすい条項

外注先との契約書で実際に見られる書き方のうち、フリーランス法や労働者性の観点でつまずきやすいものを、誤りやすい書き方と直し方の形で整理します。

外注先向けの契約・発注書の直し方

発注の成立

よくある書き方発注書を送信し、受託者が着手した場合には、内容について合意が成立したものとみなす。
整えた書き方発注書は、受託者に送信した時に、業務委託をした日を記載して明示する。着手の有無にかかわらず、発注書の記載事項を、送信した時点で受託者に伝える。

ねらい着手を成立の基準にすると、業務委託をした日と、明示した時期が分からなくなります。「直ちに」の明示を、送信の時点に結び付けます。

支払期日の起算

よくある書き方成果物の検収完了後、請求書を受け取った日から起算して、発注書に定める日数以内に支払う。
整えた書き方受け取った日(役務の提供は提供を受けた日)の属する月の末日に締め、翌月末日までに支払う。検収や請求書の到着は、支払期日に影響しない。

ねらい起算点を検収や請求書にすると、遅れた分だけ期日が延び、60日の枠を超えるおそれがあります。受け取りの日を起点にします。

指揮命令に近い義務

よくある書き方受託者は、稼働時間と出退勤の時刻を毎日記録し、実働が月に一定の時間以上であることを条件に、最低額を保証する。
整えた書き方報酬は、成果物又は業務の単位で定める。稼働の時間帯・場所は受託者が決め、報告は成果物の完了確認と、納期に関わる連絡に限る。最低額の保証はしない。

ねらい時間と報酬を結び付けた形は、時給制の雇用と見られやすい構造です。出退勤の記録は、不利な証拠を自分で作ることにもなります。

再委託と専属

よくある書き方受託者は、本業務を第三者に再委託できない。契約期間中、他社の同種の業務を受けてはならない。
整えた書き方再委託と補助者の利用は、委託者の事前の書面又は電子メールによる承諾を条件に認める。再委託をしても、受託者の責任は変わらない。禁じる競合は、秘密情報を使うものに限る。

ねらい再委託の全面禁止と専属の組み合わせは、代わりがきかず、他に仕事も取れない状態を作り、労働者性を強める材料になります。

修正への対応

よくある書き方委託者から修正の指示があった場合、受託者は無償で速やかに修正を行う。修正の回数及び範囲は、合理的な範囲に限られる。
整えた書き方修正は2回までとし、仕様の変更や追加は別の発注として、報酬と納期を決めてから行う。受託者の責めに帰すべき誤りの修正は、回数に含めない。

ねらい修正に上限がないと、仕様変更に伴うやり直しを無償で求める形になり、5条2項2号(給付の内容の変更ややり直しの禁止)に触れるおそれがあります。

業務の独立性を書く条項の例(形だけの宣言にしないために)

1乙は、本業務を、自己の裁量により、自己の事業として遂行する。甲は、乙に対し、本業務の具体的な実施方法、実施する日時及び場所を指示しない。ただし、甲は、成果物の仕様、納期、及び法令又はプラットフォームの規約を遵守するために必要な事項を示すことができる。

2乙は、個々の発注を受けるか否かを自ら決めることができ、受けなかったことを理由として、甲は乙に不利益な取扱いをしない。

3乙は、甲の事前の承諾を得て、補助者又は第三者に本業務の一部を行わせることができる。この場合も、乙は、甲に対して本契約上の責任を負う。

4甲は、乙の稼働時間の記録又は報告を求めない。甲が乙に求める報告は、成果物の完了の確認及び納期に関わる連絡に限る。

この条項だけで労働者性が否定されるわけではありません。報酬の決め方や報告の義務など、他の条項と矛盾しないよう全体で整えます。

発注後と継続中に守ること:禁止行為、募集の表示、配慮、予告

発注したあとにも、守る事項があります。主なものを整理します。

発注後・継続中に関わる主な規定

規定内容(6条3項は業務委託事業者全般、他は特定業務委託事業者が対象。5条は1項・2項とも、政令で定める期間(1か月)以上の業務委託が対象)SNS運用の外注での場面
5条1項(1か月以上の業務委託)受領の拒否、報酬の減額、返品、買いたたき、物やサービスの購入強制をしてはならない完成した動画を「イメージと違う」と受け取らない、実績づくりを理由に相場より著しく低い報酬にする、有料の素材やツールの購入を求める
5条2項自己のために金銭や役務その他の経済上の利益を提供させること、給付の内容の変更やり直しを、受託者の責めがないのに求めることで、不当に利益を害してはならない無償での追加修正、仕様変更後の作り直し、ポートフォリオ掲載を理由にした無償の追加作業
6条3項公正取引委員会等への申出を理由に、取引の削減や停止などの不利益な取扱いをしてはならない申出があった後の発注の削減
12条外注先を募る広告などで、事実と違う表示や誤解させる表示をせず、内容を正確で新しい状態に保つSNSでの「クリエイター募集」の投稿
13条継続的な業務委託では、妊娠・出産・育児・介護との両立のための申出に応じた配慮が必要育児中の編集者から納期の調整を相談されたとき
14条ハラスメントについて、相談に応じ、適切に対応するために必要な体制を整えるチャットでの人格を否定する叱責、深夜の連絡の強要
16条継続的な業務委託をやめる(更新しない場合も含む)なら、30日前までに知らせる。理由の開示を求められたら、遅れず開示する長く頼んできた編集者への、突然の発注停止

12条から16条までは、継続的な業務委託の場合を中心に、規定ごとに対象や条件が異なります。「継続的な業務委託」に当たるかは、政令で定める期間によって決まります。

SNSでの募集投稿は、「募集情報の的確な表示」の対象になる

外注先をSNSの投稿で募ることがあります。外注先を募る広告などで、業務の内容や報酬などについて、事実と違う表示や誤解させる表示をしてはならず、内容は正確で新しい状態に保つ必要があります(同法12条)。SNS上の投稿による募集も、この広告等に当たる場合があります。たとえば、「完全在宅で自由な時間に働ける」と書きながら、実際には毎日決まった時間の稼働報告を求める、「月収〇万円可能」と書きながら、その額の実現に必要な稼働時間を示さない、といった書き方は、誤解を生じさせる表示になるおそれがあります。

この募集の表示は、労働者性の問題とも重なります。「自由な働き方」と募集しながら、実態としては時間に縛るのであれば、表示と実態の食い違いが、そのまま指揮命令の存在を示す事情にもなります。募集の文面と、発注書に書く内容、実際の運用の3つをそろえておきます。

継続して頼むときの予告と理由の開示

継続的な業務委託をやめるとき(期間満了で更新しない場合を含む)は、少なくとも30日前に予告します(同法16条1項)。災害などでやむを得ない場合のように、厚生労働省令が予告を不要とする例外もあります。予告から契約終了までの間に相手が理由の開示を求めたら、遅れず開示する義務もあります(同条2項)。外注先の編集者を切り替えたい、運用方針を変えて外注をやめたい、というときも、予告の期間を逆算して動きます。

解除・更新拒絶の予告に関する条項の例

1甲が本契約をやめる場合(期間満了後に更新しない場合を含む。)は、終了の日の30日前までに、乙へ書面又は電子メールで予告する。法令が予告を要しないと定める場合は、この限りでない。

2予告の日から契約終了の日までに、乙が理由の開示を求めたときは、甲は、遅滞なく書面又は電子メールで理由を開示する。法令が開示を要しないと定める場合は、この限りでない。

3甲は、乙が相談窓口に相談したこと、又は公正取引委員会等へ申出をしたことを理由として、乙に対し、発注の削減、契約の解除その他の不利益な取扱いをしない。

解除の予告を要しない場合は法令で定められています。即時解除の事由を広く書きすぎると、法令の定めと食い違うので、事由は具体的に列挙します。

ヒヤリングで確認すること:外注の設計を決める前に伺う事項

外注先との契約書や発注書の型を作るときは、次のことを先に確認します。理由もあわせて挙げます。

外注先に仕事を出す前に確認すること

  1. 外注先は、個人ですか、一人会社ですか、従業員を使っている会社ですか。相手によって、フリーランス法、取適法、あるいはどちらでもない取引になり、必要な明示や支払期日の考え方が変わるためです。
  2. 発注する側(御社)に、従業員はいますか。役員は何名ですか。特定業務委託事業者に当たるかで、支払期日や禁止行為、予告などの義務の有無が変わるためです。
  3. 一回ごとの発注ですか、継続して毎月頼みますか。期間はどのくらいですか。継続的な業務委託に当たると、育児・介護への配慮や、解除の予告の義務が加わるためです。
  4. 外注先に、稼働の時間帯や連絡の応答時間を求めますか。日報や稼働時間の報告はありますか。時間的な拘束や報告が、労働者性の判断材料になるためです。
  5. 顧客から受けた業務を、外注に出していますか。その場合、顧客への支払期日はいつですか。再委託の特例が使えるか、外注先への支払期日をいつに定めるかを決めるためです。
  6. 外注先に、顧客のアカウントの権限や、顧客の個人情報(DMなど)を渡しますか。権限の範囲、操作の記録、個人データを扱う委託先への監督(個人情報保護法25条)の定めが必要になるためです。

回答をもとに、外注先ごとに契約書の型と発注書の型を分けて整えます。

起きがちなこと:外注先への発注で起きがちな場面

よくあるご質問

従業員のいない一人の運営でも、外注先への発注でフリーランス法の義務がありますか?

発注時の明示(3条)は、業務委託事業者であれば、従業員のいない一人の運営でも必要です。一方、支払期日(4条)や禁止行為(5条)、予告(16条)などは、従業員を使うか、役員が2名以上いる特定業務委託事業者が対象です。ただし、外注先に同じ基準で発注書を出しておくと、運用が揃います。

DMやチャットで発注して、内容をやり取りするだけでも、明示になりますか?

明示は、書面又は電磁的方法で、8つの事項を伝える必要があります。DMで依頼しただけでは、金額や支払期日などが欠けていれば明示になりません。使える電磁的方法は公正取引委員会規則で定められているので、メールなど、内容を後から確認できる形で全項目を送る運用が安全です。相手から書面を求められたら、遅滞なく書面を交付します。

外注スタッフに毎日同じ時刻に投稿してもらうと、労働者として扱われますか?

投稿の時刻だけで決まるものではなく、依頼を断れるか、進め方の指示、拘束、代替性、報酬の決め方などを総合して判断されます。予約投稿で足りるのに手動での投稿時刻を求めるなど、時間への拘束が強まる運用は、労働者性を示す事情になりやすいため、本数と期限で決める方法を勧めます。

契約書に「雇用ではない」「業務委託である」と書いておけば足りますか?

足りません。労働者に当たるかは、契約の名称や確認の一文ではなく、働き方の実態で判断されます。むしろ、報告義務や専属の制限など他の条項が雇用に近い内容だと、宣言と食い違うことが問題になります。独立性を示す条項は、報酬の決め方や報告の義務などの条項と整合させて作ります。

外注先の個人が、従業員を雇っている場合はどうなりますか?

従業員を使用している個人や、役員が複数いる法人は、フリーランス法の特定受託事業者に当たりません。そのため、同法の明示や支払期日の義務の対象外です。ただし、資本金などの条件によって、取適法の対象になる場合があります。相手がどれに当たるかは、発注の前に確認しておきます。

あわせて読みたいページ

本ページは一般的な情報提供です。個別の取引に必要な対応は、当事者の規模、顧客が事業者か個人か、契約内容、報酬の決め方などによって異なります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は官公庁の公表資料で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会) / ステルスマーケティングに関する消費者庁の案内 / 景品規制の概要(消費者庁)

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