SNSキャンペーン(投稿コンテスト・プレゼント企画)の応募規約と景品表示法

ハッシュタグ投稿のコンテストやフォローで応募できるプレゼント企画。規約を作る前に景品規制の対象かを判定し、応募・権利・未成年者・個人情報の順に固めます。

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誰でも応募できる企画のはずが、購入者限定の部門を足したことで、景品表示法の上限がかかる企画に変わっていました。

このページの要点

  • 購入や来店を条件としないオープン懸賞は景品規制の対象外。取引に付随すると一般懸賞・総付景品の上限がかかる。
  • ハッシュタグ投稿で応募が成立するなら、同意の時点・応募の成立時点・表記ゆれの扱いを規約に書く。
  • 応募作品の権利は応募者に残し、目的と方法を限った非独占的な利用許諾を受ける。
  • 未成年者の保護者同意、受賞手続の期限、取得する個人情報の項目と削除、事務局との分担を決める。

最初に結論:まず「景品規制の対象か」を判定し、次に応募規約の5点を固める

指定のハッシュタグを付けた投稿を募るコンテスト、フォローやいいねで応募できるプレゼント企画など、SNSのキャンペーンは運用代行の重要な施策です。運用代行会社が企画から当選者への連絡まで事務局を担うことも少なくありません。キャンペーンの規約を作るときは、最初に、景品表示法の景品規制の対象になるか(取引に付随する景品類の提供か)を判定し、そのうえで、①応募の成立と規約への同意、②プラットフォームとの関係、③応募作品の権利と利用許諾、④未成年者・団体の応募と当選・賞金の手続、⑤応募者の個人情報と事務局の役割分担、の5点を規約に落とし込みます。

事務所が作成した動画投稿型のキャンペーンの規約は、指定のハッシュタグを付けて動画を投稿すると応募が成立し、選考者が選考して賞金を贈る、という企画のものでした。このページでは、その規約で手当てした点を中心に、キャンペーン規約の作り方を整理します。

景品表示法の景品規制:オープン懸賞・一般懸賞・総付景品

景品表示法の「景品類」は、顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務の取引に付随して相手方に提供する物品・金銭その他の経済上の利益で、内閣総理大臣が指定するものをいいます(同法2条3項)。内閣総理大臣は、景品類の価額の最高額や総額などを制限できます(同法4条)。これを受けた告示により、くじなどの偶然性や特定の行為の優劣・正誤によって景品類を提供する「懸賞」と、もれなく提供する「総付景品」に、次の上限が定められています。

景品規制の上限(消費者庁の公表資料による)

区分最高額総額
一般懸賞取引価額5,000円未満は取引価額の20倍、5,000円以上は10万円懸賞に係る売上予定総額の2%
共同懸賞(商店街など複数の事業者が共同で行うもの)取引価額にかかわらず30万円懸賞に係る売上予定総額の3%
総付景品取引価額1,000円未満は200円、1,000円以上は取引価額の10分の2定めなし
オープン懸賞(取引に付随しないもの)景品規制の対象外。平成18年4月に上限の定めがなくなった―

判定の分かれ目は「取引に付随するか」です。商品の購入や来店を条件とせず、誰でも応募できる企画は、景品規制の対象外のオープン懸賞と整理されます。ただし、取引を条件としない場合でも、取引の相手方を主たる対象として行われるときは取引に付随すると判断され得ます。消費者庁の「景品に関するQ&A」は、SNSでのキャンペーンについて、次のような考え方を示しています。

  • 自社アカウントのフォローや投稿へのいいねだけで応募できる企画は、通常は商品の購入に直ちにつながらないため、他に取引につながる蓋然性が高い事情がなければ景品規制の対象外。
  • フォローと指定のハッシュタグ投稿で応募でき、商品の画像や使用感を投稿すると当選確率が上がる企画は、商品の購入に結び付く蓋然性が高いとして取引に付随し、一般懸賞の規制対象。
  • 友だち登録で応募でき、当選者は景品の受け取りに店舗への来店が必要な企画は、来店が必要なため取引に付随し、来店者にもれなく提供されるとして総付景品の規制対象。
  • ホームページやSNSから誰でも応募できても、商品のパッケージに応募要領を載せている場合は、商品の取引の相手方を主たる対象としているとみられ、取引に付随するとして一般懸賞の規制対象。

冒頭の動画投稿キャンペーンは、商品の購入やサービスの利用、会員登録などの対価の支払を応募の条件とせず、規約にもその旨を明記しました。動画の投稿だけを条件とし、商品の購入や有料サービスの利用を求めない企画は、取引付随性がないと整理できる場合が多いと見られます。もっとも、購入者だけが応募できる部門を設ける、購入すると当選しやすくなる、商品やチケットの購入者に応募要領を案内する、といった設計にすると判断が変わるため、企画を変えるたびに判定し直します。

ハッシュタグ投稿で応募が成立する場合の、規約への同意

ハッシュタグ投稿型のキャンペーンでは、応募者が申込みの画面で「規約に同意する」ボタンを押す場面がありません。そこで規約では、指定のハッシュタグを付して動画を投稿した時点で規約のすべての内容に同意したものとみなす、と定めたうえで、応募要項の告知に規約の掲載場所を必ず示すようにします。あわせて、応募が成立する時点を明確にしておきます。

応募の成立について規約で定めたこと(動画投稿キャンペーンの例)

  • 応募期間の始期と終期を日本時間で明記し、期間内に応募方法の条件をすべて満たした投稿が行われた時点で応募が成立すること
  • 指定ハッシュタグが正確に付与されていない投稿、表記ゆれ、類似ハッシュタグによる投稿は応募の対象外であること
  • 期間外の投稿、期間終了後にハッシュタグを付けた投稿、過去に投稿済みの動画の再投稿は対象外であること
  • 応募期間中と選考期間中は動画を公開状態に保つこと(削除・非公開化された動画は対象外)
  • 応募者本人のアカウントから投稿すること、フォローの有無は応募条件ではないこと、応募回数の制限

応募資格も規約に書いておきます。この規約では、日本国内に居住していること、プラットフォームの利用規約に違反していないこと、投稿者本人であること、主催者からの連絡を受け取れること、反社会的勢力に該当しないことを条件とし、主催者・アンバサダー・運営の関係者とその親族は応募できない、としました。関係者の応募を認めると、選考の公正さが疑われ、企画そのものの信用を損なうからです。

応募者の多くは消費者であり、主催者と応募者の関係には消費者契約法が適用されることを前提に規約を作ります。事業者の債務不履行や不法行為によって消費者に生じた損害の賠償責任を全部免除する条項と、事業者に故意又は重大な過失があるときの賠償責任を一部でも免除する条項は、無効です(同法8条1項各号)。このうち、軽過失による責任の一部だけを免除する条項であっても、重大な過失がある場合を除く旨が条項上はっきりしていなければ、無効とされます(同条3項)。事務所が作成した規約では、免責の定めと賠償の上限の定めのいずれにも「故意又は重過失による場合を除き」と明記したうえで、補助として「消費者契約法その他の法令により制限される範囲において適用し、法令上免責が認められない範囲については適用しない」との一文を置きました。また、規約の変更について、変更後の内容と効力発生日を公表し、法令上応募者の同意が必要となる変更は法令に従って同意を得る、と定めています。

プラットフォームとの関係と、選考の公正さ

SNSのキャンペーンは、そのSNSの運営会社が主催しているかのように誤解されることがあります。規約では、キャンペーンが第三者のプラットフォームを利用して行われるものの、運営会社が主催・後援・協賛・運営するものではないことを明記しました。各SNSは、プロモーションやキャンペーンの実施についてのルールを利用規約やガイドラインで定めていることがあるため、企画の段階で確認しておきます。規約の冒頭や応募要項には、主催者が誰であるか(名称と問い合わせ先)も示しておきます。運用代行会社が事務局を担う場合でも、主催者は景品類を提供し表示をする事業者であり、応募者から見て誰が約束しているのかが分かるようにしておく必要があります。

コンテスト型では、選考の基準も紛争の種になります。再生数やいいね数だけで決めると、指標の不正な操作を誘います。規約では、選考者が作品のテーマへの適合性・表現力・創意工夫などを総合的に考慮して受賞作品を決め、再生数・いいね数・コメント数などの数値のみで決めるものではないこと、適当な作品がなければ受賞者なしとできること、選考者の事情で選考が難しくなれば主催者が選考者を変更できることを定めました。禁止事項として、指標を不正に操作する行為、ボットや自動化ツールの利用、第三者へのなりすましを挙げています。

応募作品の権利と利用許諾:譲渡ではなく範囲を限った許諾にする

応募作品の著作権を主催者に譲渡させる規約を見かけますが、応募するだけで権利を失う条件は応募の意欲をそぎ、炎上の原因にもなります。事務所が作成した規約では、応募動画の著作権(著作権法27条・28条の権利を含む)・著作者人格権その他の権利は応募者又は正当な権利者に帰属し、応募は権利の譲渡を意味しない、としたうえで、主催者とアンバサダーに対し、目的と方法を限って無償で非独占的に利用することを許諾してもらう形にしました。

応募作品の利用許諾で決めたこと

項目規約での定め方
利用の目的主催者とアンバサダーの公式アカウントでの紹介、結果発表、受賞作品の紹介その他キャンペーンの運営に付随する利用に限る
利用の方法引用投稿、リポスト、トリミング、字幕・テロップの追加、サムネイルの作成、ダイジェスト編集、複数作品の再構成など
編集の限界キャンペーンの紹介・運営に必要な範囲に限り、作品の趣旨を著しく歪めたり応募者の社会的評価を不当に害したりする態様では行わない
目的外の利用広告、ランディングページ、プレスリリース、ライブの演出、ミュージックビデオ、商品販売などには使わない
期間と人格権許諾はキャンペーン終了後も存続し、応募者は許諾の範囲の利用について著作者人格権を行使しない。対価は請求しない

応募者には、作品が他人の著作権や肖像権、パブリシティ権、プライバシー権などを侵していないことを、保証してもらいます。動画に第三者が映り込んでいる場合はその人の承諾を、学校名・団体名・企業名などが含まれる場合はその利用の権限を、未成年者が出演している場合は保護者の承諾を得ていることも保証の対象にしました。生成AIで作った動画も応募できる設計にしたため、AIを使った場合でも第三者の権利を侵害しないことを保証してもらう定めを置いています。キャンペーンで集めた投稿を後から広告に使いたい場合は、改めて本人の同意を得るとともに、事業者の表示として扱う必要があります(ステマ規制のページ、著作権と素材のページで解説しています)。

未成年者・団体の応募と、当選発表・賞金の支払

年齢で区切った部門を設けるなど、未成年者の応募が見込まれるキャンペーンでは、保護者の同意の扱いを決めておく必要があります。規約では、未成年者は保護者その他の法定代理人の同意を得て応募すること、受賞候補者が未成年者の場合は主催者が保護者による同意の確認と必要な情報の提出を求めることができ、確認が終わるまで受賞の手続を留保できること、保護者名義の口座への振込を求めることができることを定めました。対象年齢を区切る部門では、応募時点の年齢や学年で判定することも書いておきます。

受賞資格と賞金の支払(動画投稿キャンペーンの規約の要旨)

1受賞候補者が、主催者からの連絡後14日以内に必要な回答又は情報提供を行わない場合、主催者は当該受賞候補者の受賞資格を取り消すことができる。

2賞金は、受賞手続の完了後、所定の日までに受賞者が指定した口座へ振り込む。振込手数料は主催者が負担する。賞金に関する税金その他の公租公課及び税務上の手続は、受賞者の責任と負担において処理する。

3受賞決定後であっても、規約違反その他受賞資格を欠く事由が判明した場合、主催者は受賞決定を取り消し、賞金及び賞品の交付を拒否し、又は返還を求めることができる。

団体での応募を認める場合は、賞金の受領者を代表者個人1名とし、団体内部の配分や権利の帰属には主催者が関与しない旨を定めました。

当選者への連絡は、SNSのダイレクトメッセージで行うことが多いため、主催者から連絡がない、なりすましのアカウントから連絡が来た、というトラブルが起きます。規約では、連絡の方法と、応募者が連絡を受け取れる状態を保つこと、主催者が指定する期限までに回答がない場合の扱いを定めます。当選の連絡を装った詐欺への注意を、応募要項で呼びかけておくことも有効です。

賞品を贈る場合は、賞品の内容・仕様・サイズを理由とする交換・返品・換金をしないこと、賞品と受け取る権利は受賞者本人にだけ帰属し、譲渡・転売・換金をしてはならないこと、発送の費用の負担を定めます。人気の限定品のように転売されやすい賞品では、転売の禁止をはっきり書いておくことが、出演者やアンバサダーとの関係でも大切です。

プラットフォームの側の事情に関する免責も、キャンペーンならではの定めです。事務所が作成した規約では、ハッシュタグの検索結果の表示不具合・検索漏れ・アルゴリズムの変更などで応募動画を認識できなかった場合、応募動画がプラットフォームの措置で削除・非公開・表示制限の対象となった場合、サービスの障害や仕様変更が起きた場合について、主催者の故意又は重大な過失による場合を除き責任を負わないとし、天災や設備の障害、プラットフォームの仕様変更、不正行為などでキャンペーンの継続が難しいときは、内容の変更・中断・中止ができる、と定めました。変更や中止をしたときは、合理的な方法で公表するよう努めることもあわせて書いています。

応募者の個人情報と、運用代行会社が事務局になる場合

キャンペーンで取得する個人情報は、必要最小限にします。事務所が作成したプライバシーポリシーでは、応募の段階では、受賞候補者や受賞者になった場合を除き、応募者の氏名・住所・電話番号などを取得しないこととし、受賞者からは氏名・賞金の振込先口座・連絡先を、賞品を発送する受賞者からは住所を、未成年の受賞者については保護者の氏名・連絡先・応募者との関係を取得する、と項目を限定しました。個人情報を取得したら、あらかじめ利用目的を公表している場合を除き、速やかに利用目的を本人に通知し又は公表しなければなりません(個人情報保護法21条1項)。賞金の支払・賞品の発送などの手続が終わった後は、法令上の保存義務がある場合を除いて削除することも定めています。

アンバサダーなど主催者以外の関係者がいる場合は、誰が個人情報を扱うのかを明確にします。この規約では、アンバサダーは選考と広報だけを担当し、応募者・受賞者の個人情報を取得・利用・管理せず、主催者もアンバサダーに個人情報を提供しない、と定めました。

運用代行会社がキャンペーンの事務局を担う場合は、主催者との業務委託契約で役割分担を決めます。景品表示法の景品規制や表示の規制の名宛人は、景品類を提供し表示をする事業者である主催者です。事務局は主催者から個人データの取扱いの委託を受ける立場になり、主催者は事務局を監督する義務を負います(個人情報保護法25条)。事務局の契約では、規約の作成と景品規制の判定を誰が行うか、当選者の選定と連絡の手順、個人情報の取扱いと削除、賞金・賞品の立替えと精算、トラブル対応の窓口、を決めておきます。規約や申込書の作り方は申込書・利用規約の作り方のページ、投稿の承認とトラブル対応は投稿承認・炎上時の対応のページをご覧ください。

キャンペーン規約を作る前に事務所が伺うこと

  1. 応募の条件に、商品の購入・来店・会員登録などは含まれますか。取引付随性があるかで、景品規制の上限がかかるかが決まるためです。
  2. 応募作品を何に使う予定ですか。広告やほかの媒体にも使いますか。利用許諾の目的と方法、事業者の表示としての扱いが変わるためです。
  3. 未成年者は応募できますか。年齢で区切る部門はありますか。保護者の同意の確認と、受賞手続の留保の定めが必要になるためです。
  4. 当選者からどんな情報を受け取り、誰が管理しますか。事務局を外部に任せますか。個人情報の項目・利用目的・削除の時期と、委託の監督を決めるためです。

起きがちなこと:キャンペーンを走らせてから気づくこと

よくあるご質問

フォローやいいねで応募できるプレゼント企画にも、景品の上限はありますか?

消費者庁の景品に関するQ&Aでは、フォローやいいねだけで応募できる企画は、通常は商品の購入に直ちにつながらないため、他に取引につながる蓋然性が高い事情がなければ景品規制の対象外とされています。購入や来店を条件にする、購入で当選しやすくするなどの設計にすると判断が変わります。

ハッシュタグ投稿で応募する場合、規約への同意はどう取ればよいですか?

規約に、指定のハッシュタグを付して投稿した時点で規約に同意したものとみなす旨を定め、応募要項の告知で規約の掲載場所を必ず示します。応募が成立する時点や、表記ゆれの投稿の扱いも明記しておきます。

応募作品の著作権を主催者に譲渡してもらう必要はありますか?

キャンペーンの紹介や結果発表に使うだけなら、譲渡までは必要ないことが多いです。応募者に権利を残したうえで、目的と方法を限って無償・非独占で使うことを許諾してもらい、著作者人格権は行使しない、と定める方法があります。

未成年者が応募する場合、何を決めておけばよいですか?

保護者その他の法定代理人の同意を得て応募すること、受賞候補者が未成年者の場合に保護者の同意の確認と必要な情報の提出を求めること、確認が終わるまで受賞手続を留保できること、保護者名義の口座への振込を求めることができることなどを定めておきます。

運用代行会社がキャンペーンの事務局をするとき、注意することは?

景品規制や表示規制の名宛人は主催者ですが、事務局は応募者の個人情報を扱う委託先になります。主催者との契約で、規約の作成と景品規制の判定を誰が行うか、当選者の選定と連絡、個人情報の取扱いと削除、賞金・賞品の精算を決めておきます。

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