SNS講座・個人コンサルの特商法の表示、クーリング・オフ、解約料の決め方

個人にSNS運用の講座やコンサルを売るとき、クーリング・オフは必要か、解約料はいくらまで取れるのか。売り方別の規制と、返金の精算式の書き方を整理します。

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このページの要点

  • 売り方で規制が変わる。自分で申込みなら通信販売、個別相談や対面を経ると電話勧誘販売・訪問販売の可能性がある。
  • 特定継続的役務提供の七業種に当たらなくても、特商法の表示・消費者契約法・割賦販売法は外れない。
  • 収入の断定や案件の紹介をうたう勧誘は、申込みの取消しや業務提供誘引販売取引の問題になる。
  • 解約料は、実際にかかった準備費用と提供済みの分を分け、返金の精算式として書く。

結論から言うと、SNS運用の講座や個人向けコンサルに「クーリング・オフはあるのか」「解約のとき返金しなくてよいのか」という問いの答えは、講座の中身だけでは決まりません。どういう経路で勧誘し、どこで申し込ませ、どんな書面を渡したかという売り方で、適用される規制が変わります。ネットの募集ページから自分で申し込んだ講座は通信販売、会場やカフェで会って契約すれば訪問販売、通話をきっかけに申し込めば電話勧誘販売、というように、同じ講座が三通りの扱いを受けます。

もう一つの落とし穴は、「特定継続的役務提供(エステや語学教室のように、特商法が中途解約のルールまで定めている取引)の七つの業種に当たらないから、規制はない」と考えてしまうことです。当たらなくても、通信販売の表示義務、消費者契約法の取消しと条項の無効、民法の解約の考え方、分割払いなら割賦販売法は、すべて独立して及びます。この記事は、個人(消費者)に向けてSNS運用の講座・コンサル・伴走を売る事業者の立場で、表示、勧誘、解約料・返金の三つを順に整理します。事業者(会社)にSNS運用の支援を行う契約は、伴走サポート・内製化支援・運用コンサルの契約書のページで扱っています。

  • 売り方で規制が決まる:自分で申込み(通信販売)、対面(訪問販売)、通話での勧誘(電話勧誘販売)、収入をうたう勧誘(業務提供誘引販売取引など)。
  • 七業種に当たらなくても、特商法の表示・消費者契約法・割賦販売法は外れない。
  • 「事業目的の申込み」と書かせただけでは、消費者性は外れない。
  • 解約料は、実際にかかった準備費用と、提供済みの分を分けて数式で書く。「開始後は一切返金なし」は避ける。

最初に結論:売り方の違いと、クーリング・オフの有無

特商法(特定商取引に関する法律)は、取引の類型ごとに、書面の交付、勧誘のルール、クーリング・オフ(理由を問わず一定期間内なら契約を解除できる制度)を定めています。SNS講座で問題になる類型を、勧誘の経路から並べると次のとおりです。

売り方別:特商法上の類型とクーリング・オフ

売り方特商法上の類型クーリング・オフ押さえる点
募集ページ・フォームから自分で申込み(通話や面談なし)通信販売法定のクーリング・オフはない広告の表示事項(同法11条)、申込み最終確認画面の表示(同法12条の6)、解約条件の表示
DM・LINE・Zoom・電話での個別相談のあとに申込み電話勧誘販売の可能性書面を受け取った日から8日(同法24条)勧誘前の事業者名等の明示(同法16条)、再勧誘の禁止(同法17条)、申込書面・契約書面(同法18条・19条)
会場・カフェ・オフ会での対面勧誘、SNSで呼び出しての対面契約訪問販売の可能性書面を受け取った日から8日(同法9条)営業所等以外での契約、呼び出し型(アポイントメントセールス)、路上での同行型(キャッチセールス)
「講座のあと仕事を回す」「在宅の案件を紹介する」と勧誘業務提供誘引販売取引の可能性書面を受け取った日から20日(同法58条)仕事の提供で収入が得られると誘い、受講料などの負担をさせる取引(同法51条)
受講生が他の人を勧誘すると紹介料・割引が出る連鎖販売取引の可能性20日(同法40条)他人を勧誘すると特定の利益が得られるとして、特定の負担をさせる取引(同法33条)

表の類型は、実際の勧誘の流れで判断されます。契約書に「通信販売です」と書いても、実態が電話勧誘販売であれば、法定のクーリング・オフは消えません。

特定継続的役務提供の七業種に当たるか

特定継続的役務提供は、エステティック、美容医療、語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介サービスの七つに限られています(同法41条など)。契約金の総額が5万円を超え、期間がエステ・美容医療は1か月超、そのほかは2か月超のものが対象で、クーリング・オフは法定の書面を受け取った日から8日(同法48条)、中途解約の際に請求できる額の上限も定められています(同法49条)。限定列挙なので、SNS運用、マーケティング、ビジネススキルの講座は、期間や金額が基準を超えていても通常は当たりません。

ただし、一つだけ丁寧に見ておきたい業種があります。パソコン教室は、パソコンなどの操作に関する知識・技術を教える役務です。オンライン会議やパソコンを受講の手段として使うだけの講座は当たりませんが、動画編集ソフトや画像加工ソフトの操作そのものを教える内容が中心の講座は、検討が要ります。SNS講座に「動画編集コース」を併設する場合は、コースごとに教える中身を確認し、該当し得るときは契約書面とクーリング・オフ、中途解約の上限の設計を、七業種のルールに合わせます。

七業種に当たらない講座でも外れない規制

規制何が及ぶかSNS講座での典型場面
特商法・通信販売の表示事業者名・住所・電話番号・価格・支払時期・解約条件などの表示募集ページに解約の条件が書かれていない、表記と契約書で食い違う
消費者契約法4条事実と異なる説明や断定的な判断による勧誘は、申込みを取り消せる「月に30万円は確実に稼げます」と説明した
消費者契約法8条・9条1項1号・10条全部免責、過大な解約料、一方的に不利な条項は無効「開始後は理由を問わず一切返金しない」
民法651条準委任契約はいつでも解除できる(損害賠償の問題は残る)受講生が途中でやめたいと言い出した
割賦販売法自社での分割払い(2か月以上かつ3回以上の賦払い)は、技芸・知識の教授が含まれる「24回払いまで可能」としている

消費者契約法は、事業として又は事業のために契約する個人を除く「消費者」との契約に適用されます(同法2条1項)。

通信販売としての表示:特商法表記と申込み最終確認画面

募集ページから自分で申し込む形の講座は、通信販売になります。通信販売にはクーリング・オフはありませんが、そのかわりに、広告に表示すべき事項が決まっています(同法11条)。講座の場合に表示を求められる主な項目は、販売価格、代金の支払時期と方法、役務の提供時期、申込みの撤回・解除に関する事項(返品・解約の条件)、事業者の氏名(名称)・住所・電話番号、法人がインターネットで広告する場合の代表者又は責任者の氏名です。

実務で取りこぼしやすいのは、次の四点です。

  1. 動作環境:動画配信やオンライン学習の仕組みなど、電子計算機を利用して提供する役務は、動作環境の表示が求められます(特商法施行規則23条6号)。「受講に必要なアプリ・ブラウザ・通信環境」を記載します。
  2. 継続契約の条件:卒業後に月額の継続プランがあるときは、2回以上の契約が必要である旨とその条件の表示が必要です(同規則23条7号)。月額のコミュニティ参加を別料金にしているときも同様です。
  3. 価格以外の負担:振込手数料、カード分割の手数料、教材の別売りは、価格以外の負担金銭として表示します(同規則23条4号)。
  4. 電話番号:請求があれば遅滞なく書面などで開示する旨を表示し、実際に開示できる体制をとっていれば、広告上の電話番号などの表示を省略できる仕組みがあります(同法11条ただし書)。ただし、前払いで受講料を受け取る場合は、入金後の承諾等の通知(同法13条)に電話番号を書く必要があり、表記では省略できても通知では省けません。

次に、申込みの最終確認画面です。インターネットで申込みを受ける通信販売では、申込みを確定する画面に、分量、販売価格、支払の時期と方法、提供時期、申込みの撤回・解除に関する事項などを表示することが求められ、申込みであることを誤認させる表示は禁じられています(同法12条の6)。講座の運営では、「契約書を送るための依頼フォーム」と「実際の申込み」を分けて運用していることがあります。その場合でも、どの画面が法律上の「申込み」に当たるのかを確認し、当たる画面に必要な事項が出ているかを点検します。決済代行サービスの購入画面が最終確認画面になるときは、その画面でも同じ事項が表示されているかを見ます。

書き方のポイント表記、募集ページ、規約、契約書のどこにも、解約の条件が同じ内容で書かれていることが前提です。広告に「いつでも解約できます」と書き、規約に「開始後は一切返金しません」と書くと、広告の表示が優先して読まれ、誇大広告の問題(同法12条)にもなります。表記は最後に一度ずつ読み比べます。

DM・Zoom・LINE通話の個別相談が入ると:電話勧誘販売と訪問販売

SNS講座の販売では、投稿やDMで関心を持った人に「無料の個別相談」を案内し、そこで講座の説明をして申し込んでもらう流れが多く見られます。この個別相談がZoomなどのビデオ通話、LINE通話、電話のいずれかであるとき、電話勧誘販売に当たるかどうかが論点になります。

電話勧誘販売は、事業者が消費者に電話をかけて勧誘する場合のほか、広告などで勧誘目的を告げずに電話をかけさせるなど政令で定める方法で電話をかけさせた場合も含みます(同法2条)。通話を終えたあとに、フォームなどで申し込んだ場合でも、通話での勧誘によって購入の意思が決まったと認められれば該当し得ます。ビデオ通話が条文上の「電話」に当たるかは、解釈が確定しているとは言い切れませんが、個別・双方向・リアルタイムで勧誘するという実質は電話と変わりません。安全な解釈が確立していない以上、該当するものとして書面と手続を整える対応が穏当です。

個別相談経由で申込みを受けるときの流れ(電話勧誘販売として扱う場合)

  1. 1相談の冒頭事業者名、勧誘目的(講座の契約の勧誘であること)、扱う役務の種類を告げる
  2. 2勧誘断られたら勧誘を続けない。契約を締結しない意思を示した人には、勧誘を続けず、再勧誘もしない
  3. 3申込み申込書面(申込み時に渡す書面)を交付する。電磁的方法にするには、相手方の承諾が必要
  4. 4契約書面の交付契約書面を渡し、クーリング・オフの事項を赤枠の中に赤字で書く。この受領日が8日の起算日
  5. 58日間書面又は電磁的記録で通知すれば、理由を問わず解除できる。通知を発した時に効力が生じる

この流れで押さえたいのは、クーリング・オフの起算日が「契約を結んだ日」ではなく「契約書面を受け取った日」であることです。契約をその日に結んでも、書面を後日郵送すれば、起算日は後にずれます。契約書面は電子データでも交付できますが、電子データにするには、あらかじめ相手方の承諾を得る手続が必要で、承諾を得たことを証する書面は紙で渡す扱いが定められています。オンライン完結にしたい場合は、この手続の分、工程が増える点を見込んでおきます。

対面の場合も同様です。会場やカフェでの説明会のあとにその場で契約する、SNSで連絡して呼び出した人に対面で勧誘して契約する、といった経路は、営業所等以外での契約として訪問販売に当たり得ます(クーリング・オフは同法9条、書面を受け取った日から8日)。事業者の事務所で契約する場合も、販売目的を告げずに呼び出した、路上で呼び止めて連れて行った、という経過があれば、訪問販売として扱われます。

クーリング・オフと返金の関係を整理する条文例

1受講者が、特定商取引に関する法律に基づき、契約書面を受領した日から起算して8日を経過するまでの間、書面又は電磁的記録により通知した場合は、当社は、本契約の申込みの撤回又は解除に応じるものとし、受講者に対し、損害賠償又は違約金を請求しない。

2前項の場合において、受講者が既に受けた役務があるときも、当社は、その対価その他の金銭を請求しない。当社は、受領済みの受講料その他の金銭を、遅滞なく全額返還する。

3本契約の返金及び中途解約に関する他の条項は、前二項の規定に反しない範囲で適用する。前二項に反して受講者に不利な定めは、効力を有しない。

クーリング・オフの本文は、実際の書面では法令の様式に沿った赤枠・赤字の条文として別に設けます。この例は、その条項と、返金・中途解約の条項との接続を示すためのものです。

「稼げる」「案件を紹介する」と勧誘するとき:消費者契約法の取消しと副業商法

SNS講座の広告では、「フォロワーが増える」「月に〇万円稼げる」「卒業後は在宅の案件を紹介する」といった表現が使われがちです。ここには三つの規制が重なります。

  1. 断定的判断の提供(消費者契約法4条1項2号):将来の収入のように変動が不確実な事項について、「必ず稼げる」と断定して勧誘し、消費者がそれを確実だと誤認して申し込んだときは、申込みを取り消せます。「事実と異なることを告げる」場合(同項1号)も同様で、実績の数字や受講生の成功例が事実と異なるときは、重要事項の不実告知になります。
  2. 不利益事実の不告知(同条2項):メリットだけを強調して、「成果が出ない人もいる」「別途の費用が要る」といった消費者に不利な事実を、故意又は重大な過失で告げなかったときも、取消しの対象になり得ます。
  3. 業務提供誘引販売取引(特商法51条):「仕事を提供するので収入が得られる」といって誘い、その仕事に必要だとして受講料などの負担をさせる取引です。講座を受けると企業案件を紹介する、卒業生に有償の仕事を回す、といった勧誘をするときは、この類型に当たるかを確認します。当たる場合のクーリング・オフは、書面を受け取った日から20日です(同法58条)。

受講者を勧誘に使う仕組みにも注意が必要です。受講生が別の人を紹介すると紹介料や割引が得られる制度は、他人を勧誘することで特定の利益が得られ、受講料などの負担を伴うときは連鎖販売取引(同法33条)に当たるかを検討します。受講規約に受講者同士のネットワークビジネスの勧誘を禁止する条項を入れることは多いのですが、これは受講者が他人に営業することを禁じる条項であって、事業者自身が紹介制度を設ける場合の規制とは別の話です。また、紹介した受講生の投稿が広告であることが分からない形になっていると、ステマ規制の問題も生じます。

成果の表示にも気をつけます。実績の一部だけを取り出して一般化した表示は、景品表示法の優良誤認表示や、特商法の誇大広告の問題を生むことがあります(景品表示法の考え方はキャンペーンの応募規約と景品表示法のページで整理しています)。表示には、実際の結果に加えて、「個人差があり成果を保証するものではない」という注意書きを近接した場所に添えますが、注意書きがあるからといって、断定的な説明の取消しまで防げるわけではありません。契約書に成果非保証条項があっても、勧誘の場での断定的な説明は別に評価されるからです。

もう一点、取消しの対象になりうる場面として、契約の前に作業を始めてしまう場合があります。無料相談の段階で、アカウントの診断書や提案資料を作り込み、「これだけのことをしたので契約してほしい」「契約しないなら費用を請求する」と告げる運用は、消費者契約法4条3項9号・10号の問題になり得ます。無料の範囲と有料の範囲は、相談の冒頭に明示します。

解約料・返金をどう設計するか

解約の問題は、通信販売でもクーリング・オフの期間が過ぎたあとでも、よく起きます。結論として、受講料を前払いで受け取る講座の解約条項は、返さない範囲を、事業者に実際に生じる費用と提供済みの分に結びつけて、数式で書くと争いになりにくくなります。理由を順に説明します。

SNSの講座やコンサルは、多くの場合、助言や指導という事務の処理を内容とする準委任契約に近い契約です。準委任はいつでも解除でき(民法651条1項)、解除が相手に不利な時期であれば損害賠償の問題が残ります(同条2項)。途中で終わった場合、受任者は履行した割合に応じて報酬を請求できます(民法648条3項)。これらは任意規定なので、契約で別の定めを置くことはできますが、消費者との契約では、消費者契約法が上限をかけます。

消費者契約法9条1項1号は、契約の解除に伴う損害賠償の額の予定や違約金の定めのうち、同種の契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分を無効とします。「解除に伴う」ものだけが対象なので、契約を続けたまま違反行為に科す違約金は、この規定ではなく、民法420条(賠償額の予定)、90条(公序良俗)、消費者契約法10条で検討します。同法10条は、民法などの任意規定に比べて消費者の権利を制限し、信義則に反して消費者の利益を一方的に害する条項を無効にします。

こうした枠組みから、「受講開始後は理由を問わず返金しない」という一律の条項は、提供した役務が少ないのに受講料の全部を返さない結果になりうる点で、争われやすい書き方です。一方、動画の視聴権を付与した分、初期の設計や準備に実際に費用がかかった分は、返さない部分として説明しやすくなります。区切り方の比較を、仮の数字で示します。

解約時の精算方式の比較(受講料36万円・6か月・全12回・5回実施済みで解約、数字は説明用の仮のものです)

方式計算返金額向く場面
回数割り36万円 ÷ 12回 = 3万円。実施済み5回 = 15万円を差し引く21万円回数が決まった個別セッション中心のコンサル
月割り36万円 ÷ 6か月 = 6万円。経過2か月分 = 12万円を差し引く24万円チャットサポートなど期間の価値が中心の講座
準備費用を別建て初期設計6万円(実際にかかった費用)+残り30万円 ÷ 12回 × 5回 = 12.5万円 = 18.5万円を差し引く17.5万円開始前に診断・カリキュラム設計に実費がかかる講座

準備費用を別建てにする場合は、その内訳が実際にかかった費用に対応していることが前提です。費用の裏付け資料は保管しておきます。

解約手数料を別に定める場合は、事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えない範囲にとどめます。消費者から説明を求められたときは、解約料の算定の根拠の概要を説明するよう努めることとされています(同法9条2項)。「動画の代金は8割なので返金しない」のような設計は、サービスの実態(個別コンサルが主か、動画が主か)と食い違うと、看板どおりに扱われないおそれがあります。区分の割合は、実際のコストと市場での扱いを基準に決めます。

分割払いにも注意が要ります。受講料を事業者自身が分割で受け取る場合(自社割賦)は、期間が2か月以上で賦払いが3回以上のときに割賦販売法の対象になり得ます。指定役務に「技芸又は知識の教授」が含まれるため、特定継続的役務提供に当たらない講座でも及ぶ点が、特商法との違いです。割賦販売法には、支払を怠った消費者に契約を解除し、又は未到来の賦払金を一括で請求するには、20日以上の相当な期間を定めて書面で催告することが必要という規定があり(同法5条)、遅延損害金の上限も法定利率に制限されています(同法6条2項)。年14.6パーセントという消費者契約法9条1項2号の上限の数字を、そのまま書くことはできません。詳しくは他のページに譲りますが、分割払いを認める契約書では、これらを条項に反映します。カード会社の分割払いは整理が別になるため、どちらの仕組みかを先に確認します。

中途解約の精算条項の例(個人向け・6か月の個別コンサル)

1受講者は、契約期間中、当社所定の方法で通知することにより、本契約を解約できる。解約の効力は、当社が通知を受領した日の属する月の末日に生じる。

2前項により解約した場合の精算額は、次の(1)と(2)の合計額とし、受講料の総額(税込)からこの精算額を控除した残額を、当社は受講者に返金する。(1)初期設計費として別表に定める額(実際に要した費用の範囲に限る)。(2)受講料の総額から初期設計費を控除した額を全セッション数で除した額に、解約の効力が生じた日までに実施したセッション数を乗じた額。

3当社は、受講者から求められたときは、前項(1)の額の内訳を説明する。

4当社の責めに帰すべき事由により、セッションを実施できなかったときは、その回数分は実施済みの回数に算入しない。

5当社は、当社、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失による場合を除き、本契約に関して受講者に生じた損害を、受講者が当社に支払った受講料の額を上限として賠償する。

第5項は、消費者契約法8条3項に合わせ、上限を定める一文の中に「当社、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失による場合を除き」を書いています。故意又は重過失の場合まで責任を限定する書き方は、無効の対象になります。

よくある失敗と直し方

個人向けのSNS講座・コンサルの規約や契約書で見られる誤りやすい条項を、整えた書き方と並べます。

個人向けSNS講座の条項:よくある書き方と整えた書き方

通信販売の説明

よくある書き方本講座はインターネットで申し込む通信販売であり、特定商取引法のクーリング・オフ制度の適用対象外である。
整えた書き方本講座の申込みの経路が通信販売に当たる場合を除き、法令に基づく撤回・解除の権利は、本規約により制限されない。個別相談を経て申し込んだ場合の取扱いは、契約書面に記載する。

ねらい個別相談や対面の勧誘を経た申込みでは、電話勧誘販売や訪問販売としてクーリング・オフが認められることがあります。一律の除外宣言は、実態と食い違います。

解約と返金

よくある書き方受講開始後は、理由を問わず、キャンセルも返金も一切できない。
整えた書き方受講開始前の解約は、実費を差し引いて返金する。開始後は、提供済みの役務の対価と初期設計費を差し引いた残額を返金する。算式は別表に定める。

ねらい解除に伴う違約金は、消費者契約法9条1項1号の平均的な損害の枠内に収めます。

受講料の3倍の違約金

よくある書き方教材の転載、録画その他の禁止事項に違反したときは、受講料の3倍の違約金を支払う。
整えた書き方教材の複製、再配布、第三者への提供に違反したときは、当社に生じた損害を賠償する。違約金を定める場合は、行為の種類ごとに、実際の損害に対応する額とする。

ねらい解除と無関係な契約違反への違約金は、民法420条、90条、消費者契約法10条の観点から過大さが争われます。一律の倍数は根拠が説明できません。

事業者の免責

よくある書き方当社の責任は、故意又は重大な過失による場合を除き、一切負わない。
整えた書き方当社は、当社、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失による場合を除き、受講者が支払った受講料の額を上限として賠償する。

ねらい軽過失の全部免責は、消費者契約法8条1項で無効になります。上限を設ける書き方は、同条3項の形に合わせます。

消費者性の否定

よくある書き方受講者は、事業の目的で本講座を申し込むものであることを表明する。
整えた書き方事業目的の申込みか否かは、申込み時の確認項目として質問し、実態に応じて個人(消費者)向けの書面と事業者向けの書面を使い分ける。

ねらい消費者契約法2条1項は実質で判断します。これから起業する人は、契約時点で事業をしていないため、消費者として扱われる余地があります。

成果保証の否定

よくある書き方本講座の効果、収益の増加を保証しない。
整えた書き方成果非保証の条項に加えて、募集ページ、個別相談の説明、資料で、収益や成果を断定する表現を使わない運用を、規約の外でも定める。

ねらい条項は、勧誘の場での断定的な説明の取消し(消費者契約法4条1項2号)を打ち消せません。

このほか、個人情報や利用許諾は申込書・利用規約の作り方のページに、成果の考え方は成果報酬とフリーランス法のページにあります。

起案前のヒヤリングで確認すること

結論として、個人向けの講座・コンサルの書類を作る前には、「どの経路で売るか」「何をいくらで、いつ払うか」「どこまでを返さないか」の三つを、具体的に確認します。理由とあわせて挙げます。

個人向けSNS講座・コンサルの書類を作る前に確認すること

  1. 申込みの経路を、広告から契約までの流れで教えてください。個別相談は、通話・ビデオ通話・対面のいずれですか。通信販売、電話勧誘販売、訪問販売のどれに当たるかで、渡す書面とクーリング・オフが変わるためです。
  2. 個別相談で、講座の契約を勧める場面はありますか。相談の最初に、講座の勧誘であることを伝えていますか。電話勧誘販売の入口が、勧誘目的を告げずに電話をかけさせる形かどうかで、扱いが変わるためです。
  3. 広告や相談で、収入や成果の数字、「案件を紹介する」と伝えていますか。断定的な説明は取消しの対象になり、案件の紹介は業務提供誘引販売取引に当たるかの検討が要るためです。
  4. 受講料の総額、支払方法、分割の回数と手数料は、どうなっていますか。自社での分割ですか、カード会社の分割ですか。自社で3回以上に分けると割賦販売法の対象になり、遅延損害金や催告の定めが変わるためです。
  5. 動画や教材の提供と、個別のセッションの割合はどのくらいですか。開始前に実際にかかる準備の費用は、何にいくらですか。返さない範囲を、実際の費用と提供済みの分に結びつけて説明できるようにするためです。
  6. 動画編集ソフトや画像加工ソフトの操作を教える内容は含まれますか。操作そのものを教える内容が中心なら、パソコン教室として特定継続的役務提供に当たるかを検討するためです。
  7. 受講者に、事業をすでにしている人と、これから始める人は、それぞれどのくらいいますか。未成年者の申込みはありますか。消費者契約法の対象になるかの判断材料になり、未成年者は法定代理人の同意がなければ契約を取り消せる(民法5条2項)ためです。
  8. 受講生が別の人を紹介する制度や、紹介料はありますか。連鎖販売取引や、紹介者の投稿のステマ規制の問題になり得るためです。

回答は、募集ページ、規約、契約書、特商法の表記を読み比べるときの基準にします。

起きがちなこと:個人向け講座・コンサルで起きがちな場面

ここまでの論点のうち、条項や運用を決めていないために起きやすい場面を並べます。

よくあるご質問

SNS講座はクーリング・オフの対象になりますか?

売り方で変わります。募集ページから自分で申し込んだ通信販売には、法定のクーリング・オフはありません。個別相談の通話や対面での勧誘を経て契約した場合は、電話勧誘販売や訪問販売として、契約書面を受け取った日から8日以内ならクーリング・オフが認められることがあります。

SNS運用の講座は、特定継続的役務提供に当たりますか?

特定継続的役務提供は、エステティック、美容医療、語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介サービスの七つに限られます。SNS運用やマーケティングの講座は通常は当たりませんが、動画編集ソフトなどの操作そのものを教える内容が中心のときは、パソコン教室に当たるかを検討します。

「受講開始後は一切返金しない」と規約に書いてよいですか?

一律に書くのは避けた方がよいです。消費者契約法9条1項1号は、解除に伴う違約金のうち事業者に生ずべき平均的な損害を超える部分を無効にします。初期設計費など実際にかかった費用と、提供済みの分を差し引いて返金する算式にすると、説明しやすくなります。

契約書に「事業目的の申込み」と書かせれば、消費者契約法や特商法は外せますか?

外せるとは限りません。消費者契約法2条1項は、事業として又は事業のために契約する個人を消費者から除いていますが、実際に事業を行っているかという実態で判断されます。これから起業する人は、契約時点では事業をしていないため、消費者として扱われる可能性があります。

「月に〇万円稼げます」と広告に書いても、成果非保証の条項があれば大丈夫ですか?

大丈夫とは言えません。将来の収入を断定して勧誘し、消費者がそれを確実だと誤認して申し込んだときは、消費者契約法4条1項2号により取り消せます。成果非保証の条項は、勧誘の場での断定的な説明を打ち消せません。

あわせて読みたいページ

本ページは一般的な情報提供です。個別の取引に必要な対応は、当事者の規模、顧客が事業者か個人か、契約内容、報酬の決め方などによって異なります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は官公庁の公表資料で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会) / ステルスマーケティングに関する消費者庁の案内 / 景品規制の概要(消費者庁)

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